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三日月先輩の事情 [ももシリーズ(高校生編)]

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三日月先輩の悲しい顔を見ていられなくて、ももは両手を胸の前に組んで、叫びました。

「待って、三日月先輩!」

ももは、やっと逢えた先輩に、聞きたいことが山ほどあったはずなのに、どうしてだか言葉が出てきませんでした。どうでもいいことならいくらでも言えるのに、肝心な言葉はのどに詰まって出てこないのです。
「ぼくには、かかわらないほうがいいよ」
先輩は、背をむけたまま、顔だけ少し振り向いて優しくももに語りかけます。
「そんなことできません」
ももは、胸がせつなくて、つかえていた想いをほとばしらせずにはいられなくなり、気づけば自分でも予想もしなかった言葉を口走っていました。
「わたしを、先輩の彼女にしてください!いえ、私が彼女になります!」

 その言葉は、普通の高校生同士の会話であれば、青春真っただ中の恋愛の始まりを予感させるものだったでしょう。でも、三日月先輩は、普通の高校生とは違い、その両肩には過去から未来へ続く、業を背負っていました。そして、その業は、「彼女になる人」にも、同じように背負わされるということを、知らない人などいません。だとしても、ももは、自分から「彼女になる」と宣言してしまった以上、後には引けなくなっていました。この先、どんなことが待ち受けていようとも。

* * *

 松平くんは、怒っていました。無性に腹が立ち、さっきから何度も舌打ちをし、貧乏ゆすりが止まりません。ももが三日月先輩に告白をしたという噂は、あっという間に、LINEなどで広まり、あちこちで噂になっていたからです。
(なんで)
誰よりも恋愛に鈍感なももが、自分から告白などするはずがないではないか。きっと人違いか、壮大なドッキリを仕掛けられてしまったんじゃ? きっとそうに決まっている。松平くんは、缶ジュースを持つ手に力が入り、つぶれた缶をそのままごみ箱へ勢いをつけて投げつけましたが、ごみ箱に入らず、仕方なく拾って入れ直しました。

* * *

「三日月先輩を護るためなら何でもします。あたしは前の彼女さんみたいにはならないわ。だって、わたしには『破邪の力』があるのですもの…そうでしょ、おばあちゃん。でも、どうすればいいのかしら」
「ふむ」
図書館のおばあさんは、眉間にしわを寄せてとても怖い顔をしている。もしかして、わたしの破邪の力はもう、弱まってしまっているのだろうか?幼い頃、偶然悪魔退治をおこなったときのようには、もういかなくなってしまっている?
「そうじゃの、あんたの力は、その…」
ももは、次に何を言われるのかと、どきどきしていた。
「護るというよりも、破るものじゃからの」
「どう違うの?」
「護るには、三日月先輩のことを、もっと知らなくてはならない。破るには、江戸時代から続く三日月家にとりついているものの正体がなんであるか、突き止めなくてはならないじゃろう」
「まずは、とりついているものの正体を、調べることから始めなくちゃいけないのね。なんだかいてもたってもいられない。わたし、三日月先輩のことが心配なんです。だから、守ってあげたい。そんな気持ちだけでは、弱いかな? 愛情が足りないかな」
「ももさんは、本当に、三日月先輩のことを、心から愛しているのかい?」
「愛して?えっとそれはまだ、半端な感じかもしれなくて、その、お恥ずかしい」
「じゃろうの。少しでも迷いがあれば、逆にあんたの力が破られてしまうよ、ももさん。あんたが関係することで、逆に三日月先輩のカモフラージュが解かれて、呪われてしまう危険性もある。あんた、命を失いたくないならば、あの人に関わる前に、よぅく己の心を見つめることじゃよ」
「わかりました。やってみます」
「あたしは、ももさんを、信じとるよ、いつでもおいで」
「ありがとう、おばあちゃん」

* * *

幼なじみの松平くんとは、駅前の公園で待ち合わせて、一緒に帰ることがよくありました。彼は進学校へ進んでいたのです。ももは、別世界で頑張っている松平くんの話を聞くのが好きでした。二人の環境が違っても、お互い高校生同士、話すことはたくさんありました。ももにとって、松平くんは単なる幼なじみ以上の存在で、彼じゃないとわかりあえないニュアンスの話があると信じていました。

「おかしいなぁ、今日は松平くん、遅いぞ。一本遅い電車なのかな。それなら、連絡くれればいいのに」
さっきから、公園のベンチで、携帯ばかり見つめているももなのでした。
「なに一人でふくれてんの?変なやつだね、いつもどおり」
中学を卒業してから、すっかり身長が伸びた彼は、最近、ももよりずっと大人びて見えます。
「ふくれてなんかいません。もとからこんな顔ですから、知らなかった?」
「ほれ」
松平くんは、斜め掛けした鞄のサイドポケットから、手のひらサイズの本を手に取り、ももに渡しました。
手渡された本は、歴史の参考書でした。
「あれ?結構薄いねえ。もっと、凄く分厚いのを想像してた」
「いいじゃんか、適当に薄いほうが、やる気になるよ」
「薄いほうがいいって、なんかばかにされた気分」
「絡むなよ」
松平くんは、ももが怒っているのに、楽しそうに言いました。
「参考書も胸も、あんまり分厚いのは、俺、好きじゃないし」
ももは、その言葉を聞いて、
「なにそれ、ちょっと!いつからそんなこと言うようになったの?ゲス!最低!」
松平くんは、ももの反応を見て面白がるように、ケラケラと笑って、先を歩いて行きます。ももは、そんな松平くんの背中を見ていると、小学生の頃から、体はずいぶん成長したけれど、性格はたいして変わらないと思わずにはいられませんでした。

普段から、困ったことや難しいことがあると、ももはまず、松平くんに聞くことにしていました。それはもう幼い頃からの習慣みたいなもの。ですから、今度も、松平くんが、先輩のことや三日月家のことを、きっと一緒に調べてくれるはず。そう信じて疑いもしなかったのです。

「ねえ、松平くん、相談したいことがあるの」
「ああああ、三日月明(みかづきあきら)のことなら、俺、一切、関わりたくないから」

ももは、まだなにも言っていないのに、どうして言いたいことがわかったのだろうと思いました。
「まだなにも言ってないよ」

松平くんは、ももをちらっと見てから、再び言いました。

「赤城が誰と付き合おう別れようと、俺には、関係ないからね。報告とかも全くいらないし」
「誰から聞いたの?」
「噂なんてすぐ広まるよ。三日月だかイタリアンだか知らないけど。ああそうそう、イタリアンのみかづきって知ってる?知らないよな? 相手にとって、知らないことや関係ないことは、話さなくてもいいし、聞かなくたっていい。話す権利もないし聞く義務もない。そうでしょ?」

松平くんは、自分が感情的になっていることに気づいて、口を閉ざしました。

「そうだ、ごめん、俺今日、寄るところがあるから、もう行くわ」
「後で電話していい?」
「あー。でも、出れないかも」
「冷たいな」
「悪かったね!」

松平くんは、手だけバイバイしながら、振り向きもせずに、ももを置いて行ってしまいました。
ももは、話したいことがたくさんあったのに、一つも聞いてもらえませんでした。でも、松平くんにだって予定はあるのだし、仕方ありません。幼なじみだっていっても、なんでも話せるわけじゃないんだということを、今更ながらに不満に感じるももなのでした。


2016-11-24 23:41  nice!(1)  コメント(0) 
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