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ももシリーズ 83 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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ももは、古びた玄関の前に立ちました。「白井」と書かれた表札は、雨に濡れてあやしく光っていました。

(しばらく来てないから懐かしい。おばあさん、元気だろうか・・・)

ももは、松平くんや先生を巻き込んで、いなくなったひめ子さんの居場所を探したことを、昨日のことのように思い出しました。
ひめ子さんの居所は、結局つかめずに終わり、それどころか、おばあさんが、認知症なんじゃないかってことになって・・・。
ももは、先生から、この件に関しては、興味本位で調べてはいけないと釘をさされたのでした。
その後、おばあさんを訪ねることは控えていたのでしたが、今はそうも言っていられない状況です。
自分の家の飼い猫が、お邪魔しているとなれば、連れて帰るのが使命ですから。

「ごめんください」

ももは、さっきねこが開けて入った玄関の戸のすきまに手をかけました。
とても狭い室内は、すぐに見渡せます。
薄暗い正面の壁には、掛け軸がかけてあり、
掛け軸の下では、なんと、ぶちねこのこももが、つめを研ごうとしていました。ももは、あわてました。

「そこで、爪といじゃダメ!」

すると、ぶちねこのこももは、振り返りざま、びっくりして、一瞬毛を逆立てましたが、ももを認めると、近寄ってきて、ひざの上に乗りました。

「もう、よそのお家で何してるの?すごい濡れちゃってるし、風邪ひいちゃうよ」

ももは、ランドセルからハンカチを出して、こももを拭いてあげました。
ももの髪の毛からも、雨のしずくが滴り落ちてきたので、同じようにハンカチでぬぐいました。
その時、家の奥から、声がしました。

「ひめ子?」

ももは、一瞬、寒いのを忘れて、声のしたほうを見ました。そこには、両手を前に出して、もものほうへ一足ずつ近づいてくるおばあさんの姿が、ありました。
その時、壁に飾られていた掛け軸が、下に落ちました。

「ひめ子・・・お帰り」

おばあさんは、かがみこんで、落ちた掛け軸をひろいました。
そして、歌うように、言うのでした。

「・・・階前に芍薬を栽え、堂後に当帰を蒔く。一花還た一草、情緒両つながら依々たり・・・」

ももは、ねこを抱いたまま、おばあさんに言いました。

「おばあさん!?わたし、ももですよ、もも!」
「もも・・・さん?」
「えっと、遅ればせながらこんにちは・・・すみません、雨宿りさせてくださいませんか?それと、このこはうちのこで、こももっていうねこなんです。勝手に上がりこんじゃってすみませんでしたっ」

おばあさんは、うつろな目を何回か閉じた後に、口元に笑顔を浮かべて言いました。

「あら嫌だ、私・・・ここで何を・・・ああそうそう、書道教室に行くのだわね」
「外は、すごい雨が降ってます」
「まだ時間はあるかしらねぇ、ひめ子の着替えを用意して、それから、お夕飯を一緒に食べるくらいの時間は」

おばあさんは、タンスから服を出そうとして、何枚も何枚も取り出しました。
ももは、困りました。おばあさんは、過去と現在が混乱しているようなのです。前に訪ねた時も、こんなことがあったのでした。
実在するひめ子さんに会ったことはないけれど、ひめ子さんは、本当は大人の年齢のはずだとわかっています。
けれども、おばあさんの思い出のひめ子さんは、ももくらいの年齢なのです。
ももを、ひめ子さんだと勘違いしているのです。

(どうしたらいいのかしら?こんな時・・・)

ももの脳裏には、松平くんの姿が浮かびました。彼なら、こんな場面は、難なく切り抜けるだろうなぁと思ったのです。きっと、彼なら、うまく大人に合わせて、困ったことも切り抜けてしまうのですから。

(こんな時、松平くんがいてくれたら・・・)

おばあさんは、急に顔をしかめて、涙ぐみました。

「そんなに濡れて風邪をひいたらどうするんだい。さあ・・・お前の着替えじゃよ」
「大丈夫です。あたし、平気ですから」
「そのままではいけないよ。さあ、体をふいて、着替えなさい」

手渡された服は、どうやら昔ひめ子さんが着ていたワンピースのようでした。
すこし厚手の生地で、ピンクの水玉模様がついていました。
袖を通すと・・・乾燥剤のにおいがとてもしみついていましたが、ももにぴったり合いました。

「さあ、ひめ子・・・」

おばあさんは、また少し、顔をしかめて、何かを思い出しているようでした。
目からは、涙があふれこぼれ落ちました。

「私は、恨んじゃいない・・・恨んじゃいない・・・」

「どうしたの、おばあさん!?」

その時、ぶちねこのこももが、おばあさんに向かってふーっと鳴きました。
おばあさんは、突然、カッと目を見開いて、奥の部屋に行くと、なにかにとりつかれたように、書道の道具を取り出して、墨をすりはじめました。

「ひめ子、ようく見ておれ!」

おばあさんは、床に白い紙をひいて、筆に墨をたっぷりとつけると、何やら文字を書き記して行きました。
ももは、おばあさんの様子を、しっかりと見守るのでした。


2010-04-13 16:55  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 82 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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ももとゆうこちゃんは、お昼休み以降、ずっと口をきいていませんでした。
その日、帰りの会が終われば、ゆうこちゃんは、習字の塾に行く予定があり、教室を早くに出て行くことがわかっていたので、ももは、なんとかして、下校時間までに、仲直りのきっかけをつかみたいと思っていました。
でも、そう思えば思うほど、なんと話しかけたらよいか、わからなくなり、戸惑いは増すばかり。
そして案の定、ゆうこちゃんは、帰りの会の先生のお話が終わるのを待って、ランドセルを腕にかけ、教室を出て行ってしまいました。
教室は、授業が終わった開放感にあふれ、ざわざわと、にぎやかになりました。

「あ~っ!今日は帰ったら何しようかなぁ。ねえ、ももちゃんちのねこにゃん、触りに行ってもい~い?」

あおいちゃんが、ももに話しかけました。ところが、ももは物思いにふけったまま、何も聞こえていない様子でした。

「お~い!ももちん?・・・だみだこりゃっ」

あおいちゃんは、あきらめのポーズをとると、行ってしまいました。

(どうしよう、このままずっと、ゆうこちゃんに嫌われたままだったら・・・。そんなのやだよう)

ももは急に立ちあがると、ゆうこちゃんの後を追いかけるように、教室を出ました。
廊下を走り、角を曲がって階段を下りると、購買があり、その先の左手に昇降口があります。そこを通り過ぎてまっすぐに行けば、体育館です。体育館からは、バスケットボールが床に跳ねる威勢のいい音が、聞こえていました。
ももは、購買の横で、ゆうこちゃんの後ろ姿を見つけました。

「ゆうこちゃんっ」

ゆうこちゃんが振り返ったその時、そのすぐ向うから、ゆうこちゃんのママがスリッパをはいてやってきました。

「こ、こんにちは」

あいさつをしたももは、無視され、ゆうこちゃんのママは娘の両肩に手をかけました。そして、もものほうを見たその目には、冷たいものが走っていました。

その様子に気がついて、ゆうこちゃんは向き直って、ママに言いました。

「ママ、ここまで来なくても、車で待っていてくれたらよかったのに」
「そうね。でも、同じことよ。塾に行くのに変わりはないわ。さあ、靴を履き替えなさい、はやく」
「そんなに急がなくても、わたしは、逃げないわ」

ゆうこちゃんは、ママに急かされて、帰って行きました。

(いつもなら、『ももちゃん、また明日ね。ばいばい』って、手を振ってくれるゆうこちゃんなのに・・・。寂しいな。ばいばいもなかった。それに・・・それに・・・ゆうこちゃんのママのあの冷たい視線・・・)


ももは、そのまま、しばらく立ちつくしていました。廊下で、誰かとぶつかった反動で尻もちをついたことも、気にしませんでした。しばらく動揺がやまなくて、思考が停止していました。
ゆうこちゃんと、「ばいばい」をして帰らない日があるなんてことは、今まで考えてもみなかったのです。

そんなふうだったので、6年3組の生徒たちが、帰り際に、ももを見つけて、

「どうしたの?大丈夫!?なんかあった?」
「赤城、具合悪い?」

などと、声をかけてくれても、やっと授業から解放された生徒たちは、それぞれの予定があるため、ももを残して帰って行きました。

ゆうこちゃんと、別れてから、ももは、昇降口の階段のところで、雨が降っていることに気がつきました。それなら、置き傘をつかえばいいと思って、教室前の廊下まで戻りましたが、どういうわけか自分の傘はありませんでした。少し待てば、止むだろうと思い、しばらく体育館の隅で、図書館から借りた本を見ていると、雨音はさらに激しくなり、いよいよ底冷えがしてきたので、ももは、やっぱり帰ることにしました。気がつけば、体育館で遊んでいた生徒はすでに帰っていて、バスケットボールだけが、転がっていました。

(もっと早く帰ればよかったな・・・失敗)

天を眺めていても、雨が止む気配は感じられません。ももは、ランドセルを濡れないようになるべく服の下に抱えて、歩き始めました。

(冷たすぎるよ、雨)

通りを歩いて行くと、お屋敷の庭にいるはずの大きな黒い犬も、塀の上にねこ座りしているはずのねこも、今日はいませんでした。こちらも早歩きですから、どの道遊んでいる暇はないからまあいいやと思って、歩いていくと、大きな電信柱の先の横断歩道へ出ました。この交差点を左に折れれば、ももの家まで、もうちょっとです。
そこで信号待ちをしていると、見なれた柄のねこが一匹、横断歩道の前の三叉路の抜け道を、歩いていくのが見えました。

(こもも!?なにしてんの、あのこったら、あんなとこで!?)

ももは、ねこを追いかけました。どうして、あんなところを、こももが歩いているのだろう。連れて帰らなきゃ風邪をひく。ねこは水に弱いんだから!ああでも、行方不明になったと思っていたから、見つかってよかった!
ももは、信号が変わるのももどかしく、こももと思われるねこの足取りをたどって行きました。
ねこは、後ろは気にせず、ゆっくりと道の端を歩き、ある家の前で、向きを変えると塀をこえて中に入って行きました。

「こももっ」

ねこは、玄関のすき間から中をのぞき、首の入るすきまをこじ開けて、家の中へと入って行ったのです。
ももは、あ然としました。そして、もっと開いた口がふさがらないことには、その家は、ひめ子さんのおばあさんの家だったのです。


2010-03-21 17:29  nice!(1)  コメント(0) 
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ももシリーズ 81 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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「ゆうこちゃん、次の時間はじまっちゃう。あたし達も、行こう!」

ももは、ゆうこちゃんの腕を引っ張りました。ところが、ゆうこちゃんは、強い力で、それを押し返しました。

「わたし、大嫌いよ!浜口も、マツケンも!みんな大嫌い」
「ゆうこちゃん?どうしたの?」

ももは、ゆうこちゃんの態度が、急変したので、どうすればいいのか、困ってしまいました。
もうすぐ、次の授業が、始まります。
キーンコーンカーンコーン・・・
   キーンコーンカーンコーン・・・

「ねえ、予鈴が鳴ったよ、クラスへ戻ろう、ゆうこちゃん、ね?」
「ももちゃんだけ、クラスに戻ったらいいわ」
「どうして、そんなことを言うの?」

このままでは、ゆうこちゃんと言い争いになってしまいます。ももは、もめるのが最も苦手なので、なんとかそれは、避けたいと思っていました。

「フン、そんなに困った顔をして、わたしに言いたいことがあるのでしょ?ももちゃんは、ずるいわ。どちらの味方なの?いつだって、あっちにもこっちにも、いい顔をしてる。いっつも、悪者は、わたしだわ」

ももは、心臓がドキドキして、顔が赤くなるのがわかりました。目からは、涙がこぼれそうでした。

「あたし、そんなつもりじゃ・・・ただ、松平くんとゆうこちゃんが、みんなが、仲よくしてくれたら・・・と思って」
「わたしは、嫌いなのよ・・・浜口のこと。それなのに・・・」

ゆうこちゃんは、顔をおおって、廊下にしゃがみこんで、涙声でいいました。

「わたし、本当は、みんなが嫌い。ももちゃんの事だけは、大好きだった。親友だと思ってた。でもこれ以上、マツケンと仲よくするなら、ももちゃんのことも、嫌いになるわ・・・」

ももは、それを聞いて、今まで知っていたゆうこちゃんの明るいイメージを思い出すことができなくなりそうでした。ゆうこちゃんのこころの深い闇の入口の前に、自分は立っているのだと気が付き、その扉のむこうに入ってはいけないと思うのでした。
そして、気がつきました。

(ゆうこちゃんは、あたしと松平くんが仲よくするのが嫌なんだ。あたし、よくわかんないよ・・・。『大好き』がたくさんあっちゃだめなの・・・?)


2009-12-26 01:10  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 80 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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「うざくなってきたから、はっきり言う。倉沢さ、ハマーの見舞いに、一緒に行ってくれないかな」
「・・・は?」

一瞬の間をおいて、ゆうこちゃんが、ちょっと驚いた調子で言いました。

「一緒に?わたしと?」
「うん。あいつ、倉沢が行けばさ、きっと、すげぇ元気になると思うんだ。頼むよ」

ゆうこちゃんは、結んでいた口を開きました。

「嫌よ、あいつのお見舞いなんて、行きたくない」

松平くんが、カチンときた様子で、腕組みしました。

「なんでそういう言い方すんのかね、ほんとに、可愛げのない」
「うるさいわね!」
「それじゃ、聞くぞ!例えば、赤城が、入院したとする」
「えっ!?なに突然、あたし?入院なんてしないよ?健康だよ、ごはんもおいしいし」
「赤城は、今、ちょっと黙ってて!」
「・・・・・。」
「で、病院で、動けなくて、落ち込んでいて、オレに会いたいって、言ったとするじゃん」
「ええっ!!!言わない、言わない!あたしがそんなこと。すごい妄想!」

松平くんは、少し頬を赤らめはしたものの、表情を変えず、ももの発言を、スルーしました。

「そうしたら、倉沢、どうする?」

松平くんは、逆の立場で、ゆうこちゃんに考えてもらうことによって、浜口くんのお見舞いに行くことを考えてもらおうとしたのです。

「どうするって、誘導尋問だわね」

ゆうこちゃんは、不敵に笑いました。

「わたしなら、こう言うわ。『早く、けがを治して、学校に来て』それで、おしまいよ。ばかじゃないの、お見舞いに行きたくないって言っている人を、無理矢理に連れて行くなんて、おかしいわよ」

倉沢ゆうこちゃんは、学校一目立つ女の子と言ってもいいくらい、気が強くて、頭もよくて、なんでもできて、美人。
そんな彼女を、浜口くんが大好きなことは、もものクラスメイトは、みんな知っています。

「なんだよ、その態度。すっげぇ、むかついた!おまえ、仲間じゃねえのかよっ」

松平くんは、一人で、階段を下りて行ってしまいました。









2009-07-15 01:09  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 79 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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「シチューおいしいね、ゆうこちゃん」
「うん!最高~!」

給食の時間に、放送当番をしながら、2人は、銀のスプーンで、クリームシチューを口に運んでいるところでした。
ふと、その手を緩めて、ももは、言いました。

「ゆうべね、ねこと一緒に寝たの。それが、朝になったら一匹もいなくなっててね。朝ごはんになっても、戻ってこなかったの。すごく心配でさ・・・」

そうなのです。
飼っているねこ達が、深夜に勝手口から出掛け、そのまま、いなくなってしまったのです。
ゆうこちゃんも、スプーンを持つ手を止めて、驚いた顔で言いました。

「みいちゃんと、たっちゃんと、こももっちも、いなくなっちゃったの??」
「・・・うん」

なかでも、ぶちねこのこももは、性格的に、ももにそっくりでした。
普段はおとなしいのに、おっちょこちょいで、おっとりして見える感じがあるというのでしょうか。

「どっかいっちゃったんじゃ、ないと思うわ。ねこって、夜活動するっていうもの。平気平気!きっと戻ってくるわよぅ!だっていっつも、ももちゃんの学校の帰りを待ってるんでしょ?玄関先でお座りして」
「ねぇ、どうしよう!今日、あたしが帰っても、ねこ達、戻っていなかったら・・・」
「あぁ~ももちゃん、最悪の事考えちゃったのね!大丈夫大丈夫!近所の子に、聞いてみましょ!ねこにゃん見ませんでした~って、ね?」

放送室を出ると、ちょうど、松平くんと田中くんが、次の社会科の授業に使う世界地図の巻物を持って、廊下を歩いてきました。
ゆうこちゃんは、男の子達を見ると、さっき、ももを慰めてくれた優しい調子とはうって変って、強い足取りで歩き始めました。

すると、田中くんが、持っていた世界地図で、松平くんの背中を突っつきました。

「なんだよっ!?たなちょん」

田中君は、にやにやして、松平くんの反応をうかがって、笑っていました。その先には、ももとゆうこちゃんがいました。

「くっそーっ!」

松平くんが、世界地図を奪い取って、たなちょんの背中に仕返しをしたところで、ゆうこちゃんが、きっぱりといいました。

「何よ、廊下で騒いじゃだめよ!わたしたち6年生が、そんな子供でどうするの?低学年の子達に、しめしがつかないじゃないの」
「こ、怖ぇ~!すんませんでしたっ!行こうぜ、マツケン!」

田中くんが、すぐに謝って、松平くんの腕を引っ張って逃げようとしたのですが、松平くんは、その場に残りました。

「な、なによ!?マツケン!何か反論があるの?」
「ねぇよ!それより・・・赤城!」
「えっっ?なぁに?」
「ちょっとちょっと!ももちゃんに直接話しかけないでくれる?今、すっごく傷ついてるんだからね」
「うっせーな!関係ないだろ!」
「関係あるわよっ、わたしは、ももちゃんの親友よっ!大親友なんだから!」

そこで、廊下の向こうから、もものクラス担任の若山先生が、声をかけました。

「ほぅら!君達は!遊ぶなら、校庭か体育館へ出なさい」
「あ、はいっ・・・!」

3人は、顔を見合わせました。

「一時、休戦ね」

ゆうこちゃんは、そういって、腕組みしました。
松平くんは、ほっと息をついて、言いました。

「倉沢が、一番、声が響くって、わかってんのかね?」
「そんなことっ」
「ゆうこちゃん、歌もうまいもんね」
「赤城、それ、わざと話ずらしてんの?」
「歌のうまい人は、発声ができてるから、声も大きいってことがいいたくって。ゆうこちゃん、ピアノの弾き語りも上手なんだよ」
「ふーん」
「いいのよそんなこと」

ゆうこちゃんは、少し顔を赤くして、話を遮りました。
ももは、忘れてたことを思い出しました。

「そうだ!あたし、松平くんのこと、怒ってたんだったっけ」
「ぷっ!なんだよそれ。そういうことは、普通、心の中で言うんじゃねぇの?」

ももは、思ったことを隠しておけないのです。
松平くんは、もものそういうところが、不思議でたまりません。思わず、笑ってしまいました。
そして、頼みごとをするには、今がチャンスだと感じました。











2009-02-18 01:53  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 78 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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ももは、夜、パジャマに着替え、ねこのみいをひざにのせて、ソファーに座っていました。
ぼんやりと、ねこをなでていると、何とも言えず、幸せな心地がするのでした。

「みい、寝ちゃったね」
「ももちゃん、宿題は?もうそろそろ、寝なさいよ」

お母さんが、抱っこしていたねこのこももを、じゅうたんに下ろしました。
こももは、すぐにお母さんから離れ、ジャンプして、もものひざに、上がってきました。

「こら、おまえ達!もうみんな、寝なさぁぁい!!」

ねこ達は、お母さんの鶴の一声にも素知らぬ顔で、もものひざの上で丸くなります。

「お母さん、あたし、このままソファーで寝てもいい?」
「だめ!風邪ひくでしょ!」
「引かないよ、あたし、今年まだ、一回も引いてないもん」
「夜になれば、冷えるんだよ」
「大丈夫。毛布かけるし、ねこがいれば、あったかいし」
「ああいえば、こういう~。キーッ!勝手にしなさい!」

お母さんのヒステリーにあっては、自室へ行かざるを得ません。
ももは仕方なく、ねこ達を抱えて、寝床へ入るのでした。

(あたしの一番の望みは、みんなで仲良くすること。なのに、時々、うまくいかない。
誰かを傷つけるのは、嫌だな。あたしが我慢してうまくいくなら、それでもいい。明日は、ゆうこちゃんと松平くん、仲良くしてくれるかなぁ。
なんとかして、仲をとりもつようにすれば、きっと大丈夫かな・・・)

ももが、ぐっすりと眠った頃、ねこ達は、そっと布団を抜け出して目を輝かせるのでした。
抜け足差し足、ももを、決して起こさないようにして部屋を出ていきます。


2008-12-24 23:20  nice!(1)  コメント(3) 
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ももシリーズ 77 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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ゆうこちゃんの目には、涙があふれていました。
「わたし、泣いてる・・・?」
占い師のお姉さんが、そっとゆうこちゃんの肩に手を添えました。
「涙は、浄化よ。嫌なことを流してくれるの。きれいな心に戻してくれる。・・・そうだわ、これをあげる。ムーンストーンペンダントよ。困った時は、両手にはさんでそっと願をこめるの」
ペンダントは、涙のしずくのかたちをしていて、銀の鎖がついていました。
「ありがとう!」
ゆうこちゃんは、涙をふいて、笑顔を見せました。
そして、思うのでした。
わたしを強く思ってくれる人って、誰かしら?
パパ、ママ?ももちゃん?それとも・・・!?嫌だわ!あいつなんて、大っ嫌い!なのに、顔が思い浮かんじゃったりして、どうなのもう!
さあ、帰って、宿題と復習とピアノと英語の勉強だわ!
パパとママには、心配かけたくない。
ゆうこちゃんは、席を立ちました。
「これ、とっても気に入りました。宝物になりそう。そうだわ、おいくらですか?」
「いいのよ。子どもから、お金はもらえないもの」
「いいえ、だめよ、お姉さん!?遊びでやっているんじゃあないんでしょ。しっかりとお金をとってください。じゃないともうからないわ」
ゆうこちゃんは、お財布から、1万円札を出しました。
占い師のお姉さんは、ぎょっとして、指輪のたくさんはまった両手を握り合わせました。
それから、我にかえって、自分に言い聞かせるように言うのでした。

「人に向けた好意は、いつか何倍にもなって返ってくるものよ。そのムーンストーンは、あなたへの好意のしるし。だから、素直に受け取ってくれたら、嬉しいわ」
「そういうものかしら・・・?」
「ええ」

ゆうこちゃんは、占いの店を後にしました。
「わたしって、意外と、素直じゃないのかもね・・・。涙を流したわたしが、本当のわたしだとしたら、
素直になるって、どういうことなのかしら・・?」
涙のしずくのペンダントを、手の中に握り締めて、少女は、行き交う人々の中を、家へと急ぎ歩くのでした。







2008-11-21 17:12  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 76 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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ゆうこちゃんは、その日、はじめて塾をサボりました。
松平くんに、仮病だなんて言われて悔しかったけれど、どうしても、胸の中のモヤモヤがとれなかったのです。
ママには、学校の文化祭の準備があるからそちらを優先したいと嘘をつき、
その足で、休日によく行くデパートへ出かけたのでした。
大好きなフォーティーワンアイスの店で、雪だるまアイスを注文し、そこにあったイスに腰掛けて食べていると、
通路の斜め向かいのお店に、可愛い宝石でできたペンダントが光っているのが見えました。
ゆうこちゃんは、立ち上がって、店の前まで行き、しばらくペンダントを眺めていました。
すると、中から、20代前半くらいとみられるお姉さんが出てきました。
「占いに興味があるの?」
お姉さんが少しかがんだ姿勢になり、ゆうこちゃんに話しかけました。
ここは、占いの店の前だったのです。
「占い?ううん、まったく」
ゆうこちゃんがそう答えると、お姉さんが、ゆうこちゃんの顔をじっと見て言いました。
「なにか、悩みでもあるのかな?そんな感じにみえたけど?もしよかったら、わたしが、タダで占ってもいいわ。どう?」
どうして、今日は、みんなして、ゆうこちゃんの様子を見抜いてしまうのでしょう。
(そうだわ。占いなんかで、わたしのことがわかるのなら、やってみてもらうのもいいかもネ)
今日は、どちらにしろ、おかしな日。
いつもと変わったことをしてみるのも、いいかも知れない。
そう思ったら、ゆうこちゃんは、不思議とお姉さんのことを信じてみたくなりました。
「待ってください。アイスを食べ終わったら、手を洗って、中へ入ります。お道具を汚しちゃ大変ですもの」
「しつけの行き届いたお嬢さんが、いったい何を悩んでいるの?それじゃあ、中にいるわ。いつでも声をかけてね」
「はい」
じつは、ゆうこちゃんは、占いをしたことがありませんでした。
知識としては、知っていました。たぶん、長い棒か何かをじゃらじゃらかきまぜるか、カードをひくか、サイコロをころがすか、そんなことだろうという風に。

薄暗い部屋の中で、占いがはじまりました。
ゆうこちゃんは、なんだか身の引き締まるような心地で、テーブルの上で繰り広げられる光景を見ていました。
「さあ、カードを3つの山にわけてください」
占い師のお姉さんが、あざやかな手さばきで、カードをめくると、占いは終わっていました。
「『力』のカードね・・・あなたのことを、強く思ってくれる人が、近くにいるみたいね。『女教皇』・・・逆位置。あなたは、その人を遠ざけている。どうしてなのかしら?」


2008-09-17 00:20  nice!(2)  コメント(3) 
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ももシリーズ 75 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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松平くんが、別階のナースステーションの前を通りかかった時、お母さんの姿がありました。
松平くんは、そのままぐるっと廊下を1周し、階段を上って戻ってきました。
浜口くんの4人部屋へ戻ってきたとき、他の少年達は、それぞれのベッドでゲームをしたり、
テレビを見たりして過ごしていました。消灯までまだ、時間があります。
浜口くんが上体を起こしました。
「どうだった?」
「ナースステーション、静かだったよ」
「おぅ~!じゃあ、ここにしばらくいろよな!」
「うん。なぁ、聞くけどさ」
「何?マツが、俺に相談?珍しいじゃん!なんでも言ってみろよ!どんな難問も解決してやる」
「マジで」
松平くんは、浜口くんのベッドの横の床に腰を下ろし、浜口くんのほうを見ずに言いました。
「ハマーはさ、倉沢じゃん?」
「ん?何!あぁ、はいはい、そういう意味?」
浜口くんは、ゆう子ちゃんのことが好きなのです。松平くんは、そのことを聞いているのでした。
「どこがいいの」
「おー?俺に聞く?可愛いからに決まってんじゃん」
「それだけ?じゃないだろ」
「何だよ~!お前、マジに聞いてんの」
「あいつがもしさ・・・」
松平くんは、言いかけてやめました。
「いや、俺さ、倉沢のこと怒らせたんだ。そんなつもりじゃなかった。でも結果そうなった。
だから、ここへ見舞に連れて来れないかも知れない。赤城に話しすればって、軽く考えてたんだけど、赤城も怒ってんだよ」
「倉沢が怒るのは、よくわかるな。日常茶飯事じゃねえの?でも大丈夫だろ。次の日になれば、戻ってるって。
 ・・・赤城って、あいつ、怒るの?見たことねー!」
「ん~まぁ、ちょっとからかえば」
「赤城は、天然だよな~。でも倉沢の可愛いところは、俺だけしか知らないんだ」
浜口くんは、頭の上で腕を組みました。松平くんは、ちょっと座りなおしました。
「何か意味深な発言だな~」
「まあまあ、君、落ち着きたまえ」
「言えよ」
「言わねえよ」
「言え!こいつ!」
松平くんは、浜口くんの大丈夫な方の足を、くすぐろうとベッドの上へ上がりました。
「わぁ!やめろ!言う言う!言うよぅ!その代り・・・!」
浜口くんは、松平くんに約束させました。
「マツも、今日あったこと、全部話せよ」




2008-07-17 23:51  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 74 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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松平くんは、学校から帰ると、自転車に乗って、浜口くんが入院している県立病院へ急ぎました。
病院の売店でサンドイッチとコーラを買って、エレベーターの6階のボタンを押しました。
浜口くんは、足の怪我で、6階小児科病棟に入院していたのでした。
浜口くんのいる4人部屋は、中からにぎやかなしゃべり声がしていました。
松平くんは、開いている戸から、そっと中を見て、安心したのか、ふーっと息をついたのでした。
「うっす」
部屋の中へ入ると、男の子達3人が、みなこちらを向きました。
「おーっ!マツッ!?おまえ!?」
「な、なんだよ!?」
「やべえ!差し入れかよっ、パンの耳とかじゃないよね、それ?」
「なんで、パンの耳とか言う?」
「だってよ、マツ、よくさぁ、給食の余りのパン、持って帰ってたじゃん?」
「ばっか、違うよ!あれは、モルちゃんにやるためだろ!」
隣のベッドの男の子が、聞きました。
「モルちゃんって?」
すると、浜口くんが、言いました。
「へ!?モルちゃんにやってたのかぁ。俺全然知らなかった。
あのね、モルちゃんっつーのは、俺っち照小で飼ってる動物なんだよね。黒くて茶色くて白くて、ピーピー鳴くやつね」
「え~?」
「モルモットでしょ」
「そうそうそう!」
浜口くんは、満面の笑みを浮かべました。すると、お腹が、ぐーっと鳴りました。
「ねえねえ!もうすぐ、飯だぜ!ちょっとさ、今日の晩飯来てるか、見てきてよ」
浜口くんが、一番戸口にいた、腕にギブスをした男の子に頼みました。
男の子は、うなずいてベッドから降りました。
「ちぇー!早く、ギブスとれないかなぁ、俺!動きてぇ!なぁ、マツ、もう飯食った?」
「いや、まだ」
松平くんは、買ってきたコーラを1本、浜口くんにあげて、もう1本のふたを開けて口をつけました。
「俺、ここで食べていこうかなと思って」
「あ~そうなの。サンキュー、コーラ。俺っちも、飲もうっと。あ~!うめぇ!
うちの母ちゃんさ、冷蔵庫にジュース買っといてくれるのはいいんだけど、炭酸、1本も入れといてくれないからさ」
「まじで」
「パイン100%ジュースとか、まじいらないし」
「それ、きついね」
「マツんちの、母ちゃん、今日は?仕事?」
「そ。夜勤。だから、気がラク」
「だよな。うちもよ、母ちゃんが来ると、うるせーから。こいつらと話してると、おもしろいぜ。
こっちのやつは、南小の5年でさ、飯見に行ったやつは、照小の3年なんだ。あいつ、使えるんだぜ!」
「ハマー、足代わりに使ってんな」
「おぅよ、この足が治るまでは、がんばってもらっちゃうもんね」
廊下に、食事をのせた台車が、運ばれてきました。
看護師さんが、それぞれのベッドまで、夕食を運んできてくれました。
看護師さんは、浜口くんの食事を持ってきて、松平くんに目をやって、にっこりとしました。
「あら、内科の松平さんの息子さんね。お母さんは、今日は夜勤?」
「はい。僕、もう少し、この部屋にいたいんですけど・・・いいですか?」
「そうね・・・。面会時間はもう終わっているのだから、本当はだめなんだけど。
でも、静かにしていてくれるのなら、いいわよ。浜口智也くんのお友達なのかしら?
じゃあ、なるべく早く、帰ってちょうだいねって言っても、無理ネ~きっと。
なにしろ、智也くんったら、話し出したら止まらないんですからね」
「なになになに!俺、この頃、超静かにしてんのに!まだ、そんなこというの~?がっかりしちゃう。もう、俺、一生しゃべんないかも」
「はいはい。じゃあ、食べ終わったらまた、食器を片づけに来ますからね。
今夜は、智也くんのお母さん、もう来ないって聞いてますから」
そこで、松平くんが、看護師さんに言いました。
「片づけなんていいっすよ、こいつが食べ終わったら、俺が、片付けますから」
「あら?そうしてくれる?さすがは、松平さんの息子さんね。じゃあ、よろしくお願いします。
智也くん、後でまた、お熱、測りましょうね」
看護師さんは、他の子達にも、同じように声をかけて、部屋を出て行きました。
「あの看護師さんさ、いっつも、もっと怖いんだぜ!おまえがいたから、怒れなかったんだよ、きっと」
「うちの母ちゃん、もっと怖いってか」
「あっ、やべぇ、俺、まずいこと言った?」
「べつに。でもさ、家じゃ、怒んないよ。てか、怒れない?俺が、家事とかやっちゃうし」
「マツんち、父ちゃん、いねーもんな。父ちゃんいねーと、やっぱ大変だよな」
浜口くんは、はっとしました。いけないことを言ってしまったと思いました。
「ごめん、俺、なんか変にしみじみとしちゃったよ。飯、食おーぜ!」
「おぅ!」
松平くんと浜口くんは、久々に会えたことに、あらためて、コーラで乾杯しました。



2008-06-05 21:59  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 73 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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73
ももは、下校時間、ひとりで校庭の隅にあるブランコに乗って、物思いにふけっていました。

(少し前までは、こうしてブランコに乗っている時も、ひめ子さんのことで、頭がいっぱいだったんだよね。
謎めいていてわくわくしてた・・・。謎って、追いかけたくなっちゃうのよね。
でも、今は、ゆうこちゃんと松平くんのことが心配でたまらない。
あたしの大好きな人達の仲が悪くなってしまったら、あたしは、どうすればいいの。
あたしは、ゆうこちゃんの味方なはず。なのに、松平くんのことも、放っておけない気がしてる。
これって、なんなの?あたし、いつの間にそんなに、松平くんのことまで、大事な友達みたいに思っちゃったんだろう)

夕暮れがせまってきていました。ももは、なんだか家に帰りたくありませんでした。
校庭から、ひとりまたひとりと、いなくなっていく生徒の影を、ぼんやりと見ていました。

(この学校に、ひめ子さんが通っていたのは、もう何十年も前なのよね。
その頃は、きっと、校庭の大さくらの木、小さかったんだろうな。
このブランコは、ここに、あったのかしら。ひめ子さんも、ここでこうして、ブランコに乗って考え事をしていたりしたのかしら。友達のことで悩んだりした時は、誰かに相談していたのかしら・・・)

山の端に、太陽の下半分が沈み始めました。
そろそろ、急いで帰らなければ、お母さんたちが心配します。

(ひめ子さんは、早くに本当のお父さんとお母さんとお別れしたのよね。
あたしには、ひめ子さんの辛さは、きっとわからない。
だって、いつも、お父さんも、お母さんも、おにいちゃんも、ねこたちも、待っていてくれるから。
家で心配してくれているから。
あたしは・・・ひめ子さんに、どうしてか魅かれてしまう。
ひめ子さんは、子供の時から、大人びていた・・・。
でも、同じ大人びているにしても、ゆうこちゃんとは、また違うっていうか。人生のことをよく知ってるっていうか・・・。
よくわからないけど。だからなのかな。ひめ子さんみたいに、あたしもなりたいって、思ってしまう。
とくに、今日みたいになんだか疲れちゃった日は、強くそう思うの・・・)


2008-05-24 00:29  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 72 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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72
帰りの時間になりました。6年3組の先生と生徒たちは、校庭で、焼きいもを食べました。
ももは、ゆうこちゃんが早退してしまったので、他の友達と一緒でした。
それは、人一倍思いやりのある、熊田しずかさんでした。
熊田さんは、みんなから、くまちゃんと呼ばれて親しまれています。

「ゆうこちゃんは、大丈夫だったの?ももちゃん、すぐに教室へ戻ってきたでしょ?」
「うん、あたし・・・そうなんだよね」

くまちゃんは、ももの様子を見て、さらに、言いました。

「ごめんね。私、クラスに具合の悪い子がいたら、真っ先に保健室連れて行かなきゃいけない立場なのに・・・。いつも級長のほうに任せっきりで・・・。でもね、今日わかったの。私だって、気持ちさえちゃんと持っていれば、級長に後れをとることないんだなぁって。ももちゃんがしてくれたとおりに。だから、ありがとう、ももちゃん。大切なことを教えてくれて。ももちゃんって、いつもはおっとりしている感じだけれど、いざというとき、勇気あるよね。あっ、ごめんね!変な意味じゃないよっ?」

くまちゃんが、慌てて手を振りながら、訂正したので、ももも、急いで首を振りました。

「そんな、くまちゃんが考えているようなこと、してないよ。あたしは、ゆうこちゃんが心配でついていっただけ。ほんとだね~、今思えば、級長に任せておくのが普通なのにね。あたしって、どうして、場違いなことばっかりしちゃうんだろう」
「ももちゃんは、そのままでいいんだよ。ずっと、そのままでいて欲しいな」
くまちゃんは、にこにこ笑っていました。ももは、くまちゃんになら、さっきのことを話せるかなとふと思いました。
「ねえ、あのね、くまちゃん、松平くんのことなんだけど・・・」
校庭を見回すと、松平くん達は、とっくに焼きいもを食べ終えて、男子同士で2チームに分かれ、野球をして遊んでいました。
「うん」
「ちょっと話、長くなっちゃうけどいいかなぁ?」
「大丈夫!」
「さっきね、3人で廊下へ出てから、険悪なムードになっちゃったの。ゆうこちゃんが、『塾さぼっちゃおうかな』って言ってね。あたしも、ゆうこちゃんが今まで、なにかをサボるのを見たことがないから、えっ!?ってびっくりしたようなこと言っちゃったの、悪かったなって思ってるんだけど・・・。松平くんなんかね、『仮病なら、ばかばかしい』って、ゆうこちゃんのこと決めつけて、切り捨てるみたいに言っちゃったの。そんなこと言われたらさ、誰だって、傷つくよね?それで・・・ゆうこちゃん、傷ついて、ひとりで、帰っちゃったの。
あたしはね、ゆうこちゃんは、具合が悪いから、塾サボろうって言ったんだと思うの。そう思うのが普通だよね?それなのに、松平くんはさ、仮病だろうって言うの。どうしてかな?松平くんって、相当ひねくれてるのかな・・・?」

もものおしゃべりをじっと聞いていたくまちゃんは、そのまま、少し考えてから、言いました。

「級長・・・松平くんは、人のことよく見てる人だと思うの。
うちのクラスさ、いじめがないじゃん?ちょっと、話飛んじゃうんだけど・・・私ね、そういうクラスができあがったのは、なぜなんだろうって、すごく考えた時期があったの。やっぱり、団結力が違うのかなって思った。結構、個性強いメンバーが多いのに、団結してる。先生の力が、大きいよね。それに、クラスをまとめている人が、しっかりとしてる。あたしは、副級長だけど、全然ダメ!目立たない役目は得意だわ。だけど、クラスをまとめていく力がないから。
その点、級長は・・・松平くんは、すごいよ。私たちの6の3の団結力が、校内で一番だっていえるのは、級長のおかげかも知れない。級長は・・・松平くんは、つねに全体をよく見てる人なの。頭がきれるし、責任感が強い。それに、誰かが、困っていたりとか、仲間外れになっていることがないように、いつも気を配っている。それが自然過ぎて、みんな案外気づいてないかもしれないね。あたしは、たまたま副をしてるから、わかる。
だからね、級長のこと、私は、ひねくれているとは思わない。むしろ、逆だと思うな」

くまちゃんは、付け足しました。

「それに、級長は、ももちゃんのこと、すごく信頼してる気がする」
「信頼!?」

ももは、思ってもみないことを言われて、驚きました。

「そう。ももちゃんは、正直な人でしょ。なんでも、そのまま受け止めてくれるところが、安心できるの。それだから、クールな級長の気持ちを逆に動かすのかな~?な~んて、これは、あたしの新しい研究課題にしとこう!」
「えぇっ!?研究課題にされちゃうの!教えて!何か、松平くんのことで、わかったことがあったら。どうしても、あの感じ、いつもひっかかるんだもん!」
「大丈夫!ももちゃんパワーだよ!」
「なにそれ!?くまちゃん、からかってんな~」
「それより、ももちゃんさ、どうして、『松平くん』って言うの?みんなは、『マツケン』って呼ぶのに。まあ、私もつい、『級長』って言っちゃうのは、そこへ置いといて。不思議に思ってた」
「それは・・・、うん、前にクラスでしゃべってた時に、松平くんが、『マツケンって言うな』みたいなこと言ってたでしょ?ブームが終わったのに、そんな風に呼ばれるの、嫌なのかな~って思って。まぁ、あだ名なんて、そんなもんだったりするから・・・関係ないかっ」
「その気持ち、わかるな~」
くまちゃんは、相手の気持ちを汲み取ることのできる女の子なのでした。副級長は、良き相談役として、じつはクラスをまとめているのでした。


2008-05-07 18:55  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 71 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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71
「ゆうこちゃん、大丈夫?ごめんね、一緒にいたのに気づいてあげられなくて」
ももは、早退するゆうこちゃんの背中をさすりました。
「いいのよ、わたしがおかしいの」
「倉沢、勉強のし過ぎじゃないの?」
前を行く松平くんが、そっけない調子で言いました。
「マツケンこそ、ついて来てくれなくて大丈夫よ。ももちゃんがいてくれるから」
ゆうこちゃんは、つっけんどんに言い返しました。
「あ、そう」
松平くんとゆうこちゃんが、険悪な雰囲気になってきたので、ももは慌てました。
「あのさ、ゆうこちゃん、塾は?行ける?今日は火曜だから、英語だよね?」
「うん・・・。どうしよっかな。ママのお迎えが来たら、自動的に連れて行かれちゃうけど」
「ゆうこちゃんのママ、具合悪ければ、きっと休ませてくれるんじゃないかなぁ」
「わたし、たまには、サボっちゃおっかな」
「えっ?」
ももは、完ぺき主義のゆうこちゃんがそんなことを言うなんて、初めてなので驚きました。そして、そんなことをいうのは、相当具合が悪いからなのだろうと思いました。
「ゆうこちゃん、心配になってきちゃった。早く帰って休んだほうがいいよ。ね、松平くん?」
すると、松平くんは、冷静な調子で言いました。
「そっちがそんな感じなら、仮病なんだろ?ばかばかしいから、俺、教室戻るわ。赤城は、つきあってやったら?」
ゆうこちゃんは、心臓がどきっと音を立てたような気がしました。本当は体の具合なんて悪くないのです。そして、こんなにも胸がもやもやするのは、マツケンのせいなのだと、今、はっきり思いました。
「大丈夫!わたし、やっぱり一人で帰れるわ。塾にだって行ける。これくらい、全然平気。じゃあね、ももちゃん、心配かけてごめん!また明日学校でね」
ももから、ランドセルを受け取ると、ゆうこちゃんは、廊下をあっという間に駆けて行ってしまいました。
「ゆうこちゃん!」
追いかけようとするももに、ゆうこちゃんは、元気に大きくバイバイをしました。
ももは、松平くんに聞きました。
「ゆうこちゃんが、仮病だなんて、どうしてそんなこと思ったの?」
「あいつ、頭を冷やしたいだけなんだ。そういう時は、ひとりのほうがいい。俺も、そういうことあるから、わかる」
「そうかな、ゆうこちゃん、大丈夫かな・・・」
「大丈夫だって。倉沢は、親の期待がすごいだろ?でも、裏切らないで頑張ってる。偉いやつだよ。でも、仮病は似合わねぇ」
「そう思ってたの?」
「うん、まあ」
「でもさっきは、もっと冷たい言い方だったよ。松平くん、もっとゆうこちゃんに優しくしてくれない?」
「いや、あいつは、そんなこと望んでないでしょ」
「なんでわかるの?」
「な、なんでって、そんなん、俺知らねーけど」
松平くんは、ももが相手だと、なんだか余計なことまで言いそうになってしまうのでした。
「それよりさ、俺から言うと、うんと言ってくれそうにないこと、赤城から倉沢に頼んでほしいって思ってんだけど」
「やだよ」
「えぇ?」
「ゆうこちゃんに、仮病って言ったこと、謝らないなら、あたしも松平くんの言うことなんて聞かない!ごめんね、松平くん」
ももは、松平くんを廊下に残して、すたすたと教室へ戻りました。


2008-04-10 23:53  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 70 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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70
6限目の授業が始まる前、6年3組の生徒は、水のみ場でかたまっていました。
ももとゆうこちゃんは、手洗いの順番を待っていました。
「焼いも、ちゃんと焼けるかなぁ」
「ほくほくなのが、食べたいわよネ」
「ゆうこちゃん、おいも料理の中で、何が一番好き?」
「そうね、かぼちゃプリンかしら」
「かぼちゃ?」
「あ、いやだ、おいもの話してたのに、間違えちゃったわ」
「あのね、あたしの場合は、焼いもは、第3位なの。1番がじゃがバターで、2番目が、シチュー。おもしろくないかな、ありきたりすぎて」
「そんなことないけど。ももちゃんは、ジャガイモのほうが、サツマイモよりも好きなのね」
「あっそうかも!」
ももとゆうこちゃんは、手を洗いました。
「あれ、ハンカチ忘れちゃった」
「はい、使って」
ゆうこちゃんは、ももにハンカチを差し出しました。
「だいじょうぶだよ。こうして振っとけば。えいえい」
「わっ冷たい」
もものななめ後ろにいた男の子の足に、水しぶきが飛んでしまいました。
「赤城さーん・・・」
「あ~ごめんね!いたのわかんなかった」
「・・・」
「む?」
逆サイドの後ろで、気配がしたので振り向けば、松平くんがそこにいました。
「松平くん、なになに?なんで無言なの?」
松平くんは、何にも言わないで、手を洗って水を飲み、そのまま行こうとしました。
「あ、松平くんも、ハンカチ持ってないんだ。あたしと一緒だ」
「俺は、ここで拭くから、いいの!」
そう言うと、自分のシャツで手を拭いて、行ってしまいました。
「なんで、あんな風なのかな。なんか言うとさ、すぐつっかかったみたいになる」
ももは、前みたいに楽しくおしゃべりしたいだけなのにな、と思っていました。
教室へ入ると、予鈴が鳴りました。
ゆうこちゃんは、さっきのもものセリフを聞いて、心の中のもやもやがますます増えてしまいました。
(ももちゃんにとってはマツケンが、突っかかってくる存在なんだわ。マツケンにとってのわたしのように。じゃあ、ももちゃんとマツケンが、同じように感じているってことは、2人は、全然違うタイプに見えるけど、やっぱりどっかが似ているってことになるんじゃないかしら。でも、それはどこなのかしら。考えても考えても答えが出ないわ。もっともっと、もやもやするだけ。それに、浜口に対してのわたしの気持ちだって、いつももやもやしたままで・・・)

「はーっ、もういや!」

今は、6限目の社会科の授業中でした。ゆうこちゃんが、突然大きな声を出したので、クラス全体がしーんと静まり返りました。
全員が、びっくりしてゆうこちゃんを見ました。
「どうした?興奮して、なにかあったか」
社会科の丸山先生が、一番びっくりしたかもしれません。
成績優秀な生徒が、いきなり授業中に、叫びだしたのですから。
ゆうこちゃんは、真っ赤になってしまいました。
授業中に叫ぶなんて前代未聞です。
「ごめんなさい。わたし、気分が悪いんです。あの、早退してもいいですか」
「そうか、あと30分、耐えられそうにないか?」
「無理です」
「よし!とりあえず、保健室で見てもらいなさい。先生が連れて行こう」
すると、ゆうこちゃんが、言いました。
「大丈夫です。先生は、社会科の授業を続けてください」
「そうかい、じゃあ・・・」
先生は教室中を見回しました。
「俺が、行きます」
「あたしが、一緒に・・・」
松平くんとももが、同時に手を上げて、立ち上がりました。
「級長くんと赤城さんね、どっちか一人でもいいんだけども。まあ、いいかな。じゃあ、2人で、倉沢くんに付き添って、ランドセルも持って行ってあげなさい。具合が悪いときは、無理しないほうがいいから。保健の先生によく見てもらってね。じゃあ、他のみんなは、授業に戻ろうか。おいおい、赤城さん、あなたも、早退するの?ランドセル持って」
ももは、ゆうこちゃんのランドセルと自分のランドセルの両方を持っていこうとしていました。
「あ、間違えちゃった」
すると、松平くんが、発言しました。
「赤城さんは、焼きいもに命かけてますから、早退しないと思いますけど」
クラスが、どっと笑いました。
ももは、恥ずかしくなって、ゆうこちゃんの陰に隠れて、廊下へ出るのでした。




2008-03-16 22:52  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 69 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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69
松平くんとゆうこちゃんは、用務員室のドアをノックしました。
「こんにちは」
返事がないので、そっとドアを開けました。
用務員のおじさんは、とても小さな部屋の畳の上で、お茶をすすっていました。
「用務員のおじさん、こんにちは」
大きな声で、もう一度、あいさつをしました。
用務員のおじさんは、まっすぐ前を向いたまま、両手でお茶碗を持って、石像のように固まって動きません。
松平くんが、言いました。
「シカトじゃないっすよね」
「わたしが話しかけるわ」
ゆうこちゃんは、用務員のおじさんの前にまわって、話しかけました。
「用務員サン」
その時、松平くんは、ゆうこちゃんの周りに花びらが舞っているように見えて、目をこすりました。
「用務員サン、うちのクラスが、焼きいもを作ってるの。おじさんに、火を見ててもらいたいんです。いいでしょう?」
用務員さんは、ちょっと頬がポッとなり、われに返りました。
「これはこれは、麗しの姫君・・・。ああ、君たち、ごめんよう。おじさんは、夢を見ていたんだ」
「お話、進みました?」
ゆうこちゃんが聞くと、用務員のおじさんは、しーっと言いました。
「だめだめ!おじさんをからかっちゃ。お話進みましたとは!おーっ!そこの6の3の級長くん、おじさんが、童話を書いてるなんてこと、誰にも触れて回んないでね!このことを知ってるのは、図書室の先生と、倉沢さんしか、いないんだからね、いや困ったことになったぞ」
用務員のおじさんは、両手で頭をかかえてしまいました。
すると、ゆうこちゃんが、松平くんに、耳打ちしました。
「あとね、ももちゃんも知ってるの」
用務員のおじさんは、ひとしきりじたばたした後、お茶を片付けたらすぐに行くよ、と請合ってくれたのでした。2人は、用務員さんの部屋を出ました。
「なんつーか、大人げないおやじだな」
松平くんが、ため息をつきました。
「子供に言われちゃおしまいって感じだわね。でもね、わたしは、用務員さんて、近づきやすくて大好きなの」
「ふーん」
「興味なしって返事でしょ」
「まあね」
「マツケンって、何に興味があるの?」
「そんなこと聞いてどうすんの」
「みんなが、マツケンのこと、どう言ってるかとか、気にならない?」
「べつに」
「はぁーーーっ、もう!」
ゆうこちゃんは、なんだかイライラしてきました。
そんなゆうこちゃんに対して松平くんは、言いました。
「ってか、倉沢、なんか、いつもつっかかってくるでしょ、俺に。俺、正直そういうの疲れちゃって」
「わたしだって、マツケンのことなんて、興味なんかないわよ」
ゆうこちゃんは、言い返そうと思って、やめました。
そして、自分のこころが本当はマツケンに何を聞きたいのか、ちゃんと整理しようと思いました。
「マツケンが、ももちゃんと仲がいいのが、気になるの。わたしが、塾へ行っている間に、2人がどんどん仲良くなっちゃったでしょう。マツケンは、女の子なんか興味ないって思ってたから」
松平くんは、ゆうこちゃんが急にしおらしくなり、おそらくは本心であろうことを話し始めたので、面食らいました。
「・・・え~っと」
ゆうこちゃんは、松平くんからどんな言葉が出てくるのかと思い、待ちました。
「倉沢!ハマーがさ、おまえに会いたがってんだけど、見舞い行くだろ?」
「えっ?」
急に、浜口くんの名前が出てきて、ゆうこちゃんは、動揺してしまいました。
「浜口のことなんて、今関係ないでしょ」
「関係ないことないよ、てか、俺にとっては、めちゃめちゃ重要だし」
ゆうこちゃんは、話をそらされたことに、腹を立てました。
「わたし、先にいく」
これでは、先ほどとは形勢逆転です。
ゆうこちゃんは、松平くんに、一本とられてしまったようです。




2008-03-11 23:56  nice!(0)  コメント(0) 
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ももシリーズ 68 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


68
「6年3組~!集合~~」
グラウンドの隅で、先生がみんなを呼びました。
「集合だって」
「行こう」
ももとゆうこちゃんが手をつないで駆けつけると、みんながサツマイモの周りに集っていました。
「やったぁ!今年もやっぱ、焼きいもやるんだね」
みんなが揃うと、若山先生が言いました。
「よし!みんないいかな。サツマイモを選んだら、このアルミホイルで包んで、マジックで名前を書いてください」
「は~い」
「私、ちいさいのがいい」
ゆうこちゃんが言うと、先生が言いました。
「おっ?殊勝な心がけだね。先生は、大きいいもがいいなあ」
「先生は、太るから、だめ!」
クラスの女子達は、先生の腕を押さえて動けなくしました。
「これは、君たち、協力的ですね!」
「冗談ですよ~。はい、先生、一番おっきいおいもネ」
サツマイモがホイルに包まれました。クラス分のそれを地面に置いて土と落ち葉をかぶせて、火をつけました。おいもが焼けるまでしばらくかかりそうです。
「よーし!そうしたら、みんなで残りの時間は、用務員さんのお手伝いをしましょうか。いもが焼けるのは、6時間目が終わる頃だから、まるまる一時間は、用務員さんに火の番をしてもらうことになります。じゃあ、級長くん、用務員さんにお願いの音頭をとってください」
級長の松平くんが、はいと返事をしました。
「じゃあ、ぼくと誰か一緒に、用務員室に来てくれる人」
すると、珍しくゆうこちゃんが、手を上げました。
「倉沢?」
「私、用務員のおじさんってなんだか可愛くて、好きなの」
ゆうこちゃんは、ももに笑顔を見せて、松平くんと一緒に校舎のほうへ歩いていきました。


2008-02-24 14:57  nice!(2)  コメント(2) 
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ももシリーズ 67 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


67
5時間目は、野外活動が組まれており、生徒達は、校庭に出て落ち葉拾いをしていました。
集めた落ち葉は大きな山となって積まれていきます。
班分けはなかったので、仲良し同士がくっついて楽しそうにおしゃべりしながら集めまわっていました。
「ももちゃん、私の苦手な授業、わかる?」
ゆうこちゃんは、色とりどりの葉っぱを一枚ずつ集めていて、ふいに言いました。
「えーと、言ってもいいの?」
「全然」
「水泳!」
ゆうこちゃんは、ぱちぱちと手をたたきました。
「さすが、当たりー!」
「ゆうこちゃん、夏、スクール行くって言ってたよね」
ももはその時、もしゆうこちゃんが通うなら、自分も通おうかと思っていたことを思い出しました。
「そうそう。泳げないのが悔しかったから夏休みのはじめ頃、体験入学もしたのよ。そうしたら、そこに、知ってる子がいたの」
ももは、その話は初めて聞くと思いました。
「ゆうこちゃんの知られざる話が、でたぁ」
ゆうこちゃんは、指先で落ち葉をくるくると回しながら続けました。
「その子、飛び込み台の高いところから宙返りして飛び込んだの。すごいと思って思わず見とれていたら、それが、浜口だったの。浜口がそのスクールに通ってたことは、私全然知らなくて。向こうも、私が同じところに入ろうとしてるなんて思わなかったと思うの。それでね、私、怖いけど、水の中になるべく顔をつけるようにしていたの。そうすれば、浜口は隣のレーンを泳いでるから、私に気がつかないだろうって思ったの」
ももは、思い出していました。夏休みが終わった後、ゆうこちゃんに、スクールの話をした時、スクールへは結局通わなかったと言っていたことを。
「それでそれで?」
「でもあの子、私に気がついて話しかけてきちゃったの。私、すっごくはずかしかった。だって、私が泳げないからここへ来たんだってこと、あの子、知ってたはずだから。そしたらね、インストラクターが浜口を冷やかしたりして、私も巻き込まれて、もう、うんざり」
「浜口くん、ゆうこちゃんに何て言ったの?」
「それは・・・ビート板の持ち方はこのほうがいいとかなんとか・・・」
「うんうん」
「向こうはいいわよ。スイスイ泳いじゃって得意なんだもの。私は泳げるかおぼれるかの瀬戸際で必死だったのに・・・すごく迷惑に思えて。だから私ね、浜口に、ついひどいこと言っちゃったのよ」
「何て言ったの?ひょっとして」
「言ってみて」
ももは、ゆうこちゃんがうっかり言ってしまいそうなことを考えました。
「触らないでよ!とか?」
「そうじゃないわ」
「めざわりよ!とか?」
「それは、あんまりだわ、ももちゃん。それは言ってない」
「じゃあ、あっちへ行って!?」
ふと見ると、クラスの子達が、こちらを見てひそひそ話していました。
もも達が二人でけんかしてるんじゃなかろうかと思ったようです。ももとゆうこちゃんは、腕を組み、
「仲良くやってまーす」
と言って手を振って見せました。
ゆうこちゃんは、言いました。
「あのね、『私にかまわないで』って言っちゃったの。ひどいでしょ?」
ゆうこちゃんは、はぁーっと息をついて、地面の落ち葉を手でかきまわしました。罪悪感が胸に広がってしまったようです。
「あぁ、それは浜口くん、ショックだったかも。きっと」
ももは、励ます言葉をかけようと思ったのですが、何にも言えなくなりました。
もし、自分が浜口くんみたいに言われたらやっぱりしばらく立ち直れません。
「わかってる。それにね、まだあるの」
ゆうこちゃんの胸には、ずっと鍵をかけたままの引き出しがあり、そこには痛々しい思い出が詰まっているようでした。


2008-02-13 00:33  nice!(2)  コメント(2) 
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ももシリーズ 66 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


66
あおいちゃんやゆうこちゃんならずとも、好きな子の話題が出るのは、もっともです。
そわそわ、わくわくしながら、時が過ぎて行きます。
お昼休みになりました。
浜口くんへと書いた色紙がクラスを回っていました。
そこにはすでに、男子の寄せ書きが書いてありました。
「なるべくはやめに書いて回してくださいって。はい、ももちゃん」
手渡されたとき、女子のメッセージは3人分が書かれていました。
ももは、隣の子とダブらないように水色のペンを使って、メッセージを書き入れました。
そして、色紙をゆうこちゃんに渡しました。
ゆうこちゃんは、黒いペンを使って色紙に何か書こうとして一度ペンを置き、それから、筆いれの中を探ってペンを出したり引っ込めたりしていました。
「ゆうこちゃん、どうしたの?」
「何色のペンで書こうか迷っちゃったの」
「そうかぁ、何色がいいんだろう?」
ゆうこちゃんも、迷うことがあるんだと思いながら、ももはみんなのメッセージに目を走らせました。いろんな色で好きなことが書かれてありました。
「ねえ、これおかしいよね?」
ももが指をさしました。ゆうこちゃんが目をやると、こう書かれていました。

俺にまかせておけ! メロス

「ほんとね、メロスって、誰よ?」
ゆうこちゃんは、そう言って笑って、色紙に、先に自分の名前を書きました。
そして言いました。
「なんだか、うまい文章が思いつかないの。ももちゃん、なんて書いたらいいかアドバイスちょうだい」
ももは、自分なんかそう気のきいたことを書いていないしアドバイスになるかわからないと思いながら、言いました。
「気持ちだよ、気持ち」
「そうだ、そうよね」
すると、ゆうこちゃんは、すぐにすらすらと一文を書きました。そこには、

うるさいひとがいなくてせいせいしてるけど、静かすぎるのもあれなので、はやく元気になりなさいよ

と書かれていました。
「ねえ、ゆうこちゃんが思う浜口くんって、どんな子?あたしはね、これ書いてて夏のプールを思い出したの」
ゆうこちゃんは、色紙を後ろの子へ回して、ペンをしまいながら言いました。
「プール?」
「うん。浜口くん、水泳が得意だったでしょ。プールの光みたいとか思って」
ももにとって浜口くんは、夏のプールに照り返す光みたいに、明るい存在だったのでした。
プールサイドから勢いよく水に飛び込む浜口くんの元気な姿が目に浮かびます。
秋になって思い出すと、今クラスにいないその存在が、ひときわまぶしく感じられるような気がするのでした。
「キラキラしてるってこと?水に太陽が映って反射してるって感じ?」
ゆうこちゃんは、そう問いかけながら、思っていました。
(そういえば、・・・浜口が、水泳を教えてくれようとしたことがあったっけ)
「ゆーうこちゃん?固まっちゃったかい?」
ゆうこちゃんは、浜口くんのことでもやもやしている気持ちがずっとありましたが、誰にもまだ話していませんでした。


2008-02-11 17:40  nice!(1)  コメント(0) 
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ももシリーズ 65 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


65
明くる朝は、快晴でした。ももは、トーストと牛乳で朝ごはんを済ませ、いつもより、早く家を出たのでした。空気は冷たく、吐く息は、白くなります。ももは、学校へ行く前に、お婆さんの家へ寄ってみようと思っていました。昨日から、様子が心配だったのです。
 すると、家の前には、昨日と同じ白い車が停まっていました。どうやら、お婆さんは、家にいるみたいです。
(お婆さん、誰かがそばにいてくれるなら、安心だよね)
 ももは、ほっとして、歌を歌いながら、学校へ急ぎました。
「おはよう、ももちゃん」
「あおいちゃん、可愛い手袋だね。うさぎが付いてる」
「うさぎの耳付き帽子もあるの。ほらっ」
あおいちゃんが、かぶって見せました。
「超かわいい」
教室の机に腰掛けて、あおいちゃんは、なにやら絶好調なようです。
「ももちゃんも、かぶってみて」
「うん!似合う?」
「いいわ~。ももちゃんも、かぶりもの系の子だね。ねえ、うさぴょん隊つくろうよっ」
「うさぴょん隊?」
ももは、うさぴょん隊って何をするんだろうと思いました。ゆうこちゃんが、教室へ入ってきました。
「あおいちゃん、朝から、元気なのね。ももちゃん、今日、早ーい」
「おはよう!ゆうこちゃん」
「ぉはよ。眠ーい」
ゆうこちゃんが、コートを脱ぎ、白いモヘアのマフラーを首から外しました。
「ゆうこちゃんは、憧れの子女系が、似合うな、うん」
あおいちゃんは、なにやら、考えています。
「おーい、女子。副級長、見なかった?」
松平くんが、教室の隅のほうから、女の子の集団に声をかけました。
「副級長なら、さっき廊下ですれ違ったけど?どこへ行くのかは、聞いていないわ」
と、ゆうこちゃん。
「ん、そう」
「ねえねえ、マツケン。あたしたち今日から、うさぴょん隊つくるの。よろしくねっ!」
「は?」
そこへ、かっちゃんこと吉田勝也くんが声をかけました。
「なんのカッコすんの?村崎あおい!メイド?見たくねぇ~」
あおいちゃんが、かっちゃんに言い返します。
「うっそだぁ!吉田、メイド好きなくせに!マツケンが、言うならわかるけど、ねー」
そこで、ももと松平くんの目が合いました。松平くんは、かすかに笑いました。
「なにそのかっこ?ぷっ。幼稚園のおゆうぎかよ」
ももは、幼稚園ってことはないと思い、腹が立ちました。
「なによ!じゃ、松平くんも、かぶってみれば」
ももは、うさぎの帽子を松平くんにかぶせようとしました。すると、嫌がるかと思いきや、松平くんは、帽子を受け取ってかぶりました。
「おいおい、マツケン萌えしてるぜ」
かっちゃんが、大きな声で騒いで、クラス中をあおります。
「俺、これ、似合う気がする」
松平くんの意外な行動に、クラス中がびっくりしていました。
「そ、それ、あたしの帽子」
あおいちゃんが言うと、松平くんは、
「わりぃ、はい」
と言って、帽子を持ち主に返しました。間もなく予鈴がなり、先生が戸を開けて入ってくると、みんなは、がたがたと席に着きました。ゆうこちゃんがももに言いました。
「あおいちゃんったら、あの帽子、あんなに大事そうにしてるわ」
「うさぎの帽子、可愛かったもんね」
「違うわよ、ももちゃん。マツケンがかぶったからよ」
「なんで、そんなことわかるの?ゆうこちゃん?」
「ももちゃんたら」
ゆうこちゃんは、にっこり笑って、まるでお姉さんみたいな口調で、言いました。
「女のカンよ」


2008-02-01 01:41  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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ももシリーズ 64 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


64
ももは、久しぶりに、おばあさんの家の前まで来ていました。
ねこのこももと一緒に散歩しながら来たのでした。
家の前の道路に、見慣れない白い車が止まっていました。
「誰か、来ているのかな?」
入るに入れず、しばらく家の前で、待っていましたが、誰も出てくる気配はありません。
すると、中から、声が聞こえてきました。
「あいたたた・・・」
「つかまってください。せいの!よいしょ!」
おばあさんは、怪我でもしたのでしょうか。
誰かに手を貸してもらっているようです。
その時、ももは、急に斜め後ろから、声をかけられました。
「・・・赤城さん?」
ふりむくと、同じクラスの大関翼くんでした。
翼くんは、松平くんたちと別れて、帰り道に近くを通りかかったのです。
「わっ、びっくりした!翼ちゃん」
翼くんは、女の子たちから、翼ちゃんと呼ばれていました。
「何しているのかと、思ったでしょ?」
「ううん。・・・うん」
「やっぱり?」
「あっ、可愛いね。ねこ。名前は?」
「えっとね」
「待って・・・当てます!」
「えっ?」
「・・・ぶち。だって、ぶちねこだから」
「ブー。違~う」
「・・・じゃあ、キャンディ」
「どうして?」
「赤城さん、あめ好きって言ってたから」
「そんなこと言ったかな。はずれー!。この子の名前はね」
ももが言おうとすると、翼くんがぼそっと言いました。
「・・・マ、マツケン?」
「マ、マツケンって、なにそれ!?」
「・・・だって、好きだから・・・?」
「翼ちゃん、変だよ、変!ヘンヘン!」
「あっ、でも、ぼくんちのかめの名前には・・・。いえ、なんでもないです・・・」
翼くんの大事なかめに、どんな名前がついているのか、ももには、見当もつきませんでした。
「この子ね、こももっていうの」
「超可愛いや。抱っこしてもいい?」
「うん、いいよ」
翼くんが抱っこすると、こももは、居心地悪そうに身を固めて暴れて、翼くんの手をひっかきました。
「・・・いて」
「ごめんね、大丈夫?」
こももは、手から逃れ、走り去っていきました。
「・・・ぼく、帰ろ」
「ばいばい」
「赤城さんは、帰らないの?」
「あたしね、ここの家のおばあさんに会いに来たの。だけど、誰かお客さんが来てるみたいだから、少し待っていようと思うの」
「・・・ぼくも一緒にいようかな」
「おばあさんと話すの、好き?」
「一応、お婆ちゃんっこだから」
「そっか、じゃあ一緒に待っててくれる?」
翼くんは、ももと話していると、すらすらと言葉が出てくるみたいです。
ももにとっても、翼くんは、ちょっと変な者同士?話しやすい男の子でした。
しばらく待っている間に、翼くんが、もじもじし始めました。
「赤城さん、あの、ちょっと・・・」
「どうしたの?」
「・・・あの、その」
「帰るの?」
「・・・また、すぐ戻ってくるので」
ももは、少し考えて、今日は、もう帰ることにしました。
「大丈夫?ごめんね、つき合わせちゃって。あたしも、帰ることにする。また明日、学校でね。ばいばい、翼ちゃん」
ももが、手を振ると、翼くんは、手を振りながら、猛然と走り去っていきました。ももは、翼くんは変な子だなぁと思いました。でも、気が合うところもあるのです。


2008-01-30 00:20  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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ももシリーズ 63 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


63
「じゃ、翼から。赤城のどこらへんがいいの?」
翼くんは、話をふられて、言葉に詰まりました。
「・・・おとなしいところとか」
「とか?」
「あとは・・・話しかけやすいし・・・。目が合うと、いつもにこって笑ってくれるから・・・」
「ふーん」
松平くんは、思いました。
(あいつ、よくしゃべるし、俺と目が合ったって笑わないけどな)
たなちょんが聞きました。
「マツケンは?」
「べつに、どうといって、好きなところなんてなぁ」
かっちゃんが、追求します。
「クールに決めようとすんの、マジやめて」
「そうだよ、マツケン。俺たち、真剣に聞いてんのに!」
たなちょんが、ふくれました。
松平くんは、眉間にしわをつくって、真剣に考えました。
「ホントにさ、どこが好きとかって、特別ないな」
「・・・松平くん、今、深いことを言った」
「なんだよ、翼、また急にしゃべりだして」
「好きなところがないってことは、・・・ラブイズオール」
「・・・?」
「翼よ、ほんっとに意味がわからん。教えろ」
「すべてを受け入れるのが、愛ってことです」
「おまえ・・・?」
かっちゃんが、翼くんを、まじまじと見つめました。
「どこで、そんなこと、習ったんだ?」
「・・・おねえちゃんの読んでる雑誌に書いてあったから」
松平くんは、それを聞いて、ぷっと吹き出しました。
(好きなやつのすべてを受け入れることが、愛か。そういう男に、俺もなれるかな)
この心の声を聞いたのは、読者だけですから、絶対に誰にも言わないで下さいね。
彼、恥ずかしがりますから。
「この~キザ男!」
それからみんなで、翼くんにひざ蹴りをお見舞いしました。翼くんは、なぜか嬉しそうにはしゃいでいました。


2008-01-29 22:05  nice!(0)  コメント(2) 
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ももシリーズ 62 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


62
松平くんとクラスの男の子たちは、ロボット公園に集まって、相談をしていました。メンバーは、松平くん、吉田勝也くん、田中涼くん、大関翼くんの4人でした。
「かっちゃん、いい?色紙買いに、一緒に行くの」
「全然いいよ」
「おれはどうすんの?」
「たなちょんは、女子に声かけてよ。ハマの見舞いにさ、色紙にみんなで一言書いたやつを持っていくからさ、女子にも書いてもらえるように言って」
「誰に先に頼んだらいいかね?」
「あ、いいや。やっぱ俺から、副級長に頼んどくわ」
「そう、わかった。ではでは、おれは、なにしたらいいかね?」
「じゃあね、たなちょん。ハマーがやってた当番あるじゃん。社会科の授業の時、地図帳取りに行くの、あれ、俺と交代で代わりにやってよ」
「ああ、ああ、あれか、わかった」
「たなちょん、場所知ってるか?社会化資料室にあんだよ。おもしれえんだぜ、あの部屋。隠れ家っぽくってなぁ。なっ、マツケン!」
かっちゃんこと、吉田勝也くんが、松平くんと肩を組みました。
「うん、おもしれぇよ。秘密道具みたいなのがいっぱいあるよね」
「レクリエーションでさ、校内かくれんぼ大会やった時、あそこに隠れてて、最後まで見つからなかったやつがいんだよ」
「あの時、鬼やったのさ、マツケンとあと、誰だったっけ?」
「女子の村崎あおい」
「そうだ!」
「優勝したのは?もう忘れちゃったな」
「・・・ぼく」
「うわっ、翼かよ?いきなりしゃべるから驚くじゃん!あ~~!でもわかるわ!」
「・・・その時もらった折り紙のメダル、うちに飾ってあるよ」
「てか、あれ作ったの俺だぜ!」
松平くんが手を叩いて大受けです。
「らしいわ~」
かっちゃんとたなちょんも、翼くんの頭をぐりぐりして、遊んでいます。
「・・・あと、赤城さんが準優勝」
そこで、みんながぴたっと松平くんを見ました。松平くんが、一呼吸おいて言いました。
「ちょっ、何でそこで、みんな俺を見る!?」
「あ~、マツケン鏡見てみろよ。赤面、赤面!」
「うっさい!」
「・・・ぼく、赤城さん、好きだけど」
「おいおいおい!俺そういう話、あんま好きじゃない!いいじゃんか、誰が誰を好きだって」
「これだから、マツケンはさ~。恋バナ絶対しようとしないしな~。ハマちゃんとつるんでる意味が、わからん」
「ハマちゃんといつも何話とるん?」
かっちゃんとたなちょんが、からかいます。
「今は、ハマーの見舞いの話してんの!」
「え~、おっほん。赤城さんとは、いつの間にくっつかれましたのん?」
「ぴゅーーっ、最高!」
松平くんは、ため息をつきました。話の方向性を変えようと思いましたが、無駄な抵抗でした。
「はぁ、疲れる。あのねぇ、おまえら、何でそんなことで盛りあがんの?」
「マツケン話しちゃえよ。俺ら、誰にも言わないし。なぁ?」
「みんなで、暴露大会やろう!」
「・・・ぼく、もう言っちゃった。・・・はは」
嫌がる松平くんを、3人が押さえ込みます。
10分後、小山の下のトンネルで、松平くんは、仕方なしに話し出しました。


2008-01-28 21:55  nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
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ももシリーズ 61 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


61
放課後、ももとゆうこちゃんが、教室で帰り支度をしている間に、松平くんは、他の男子達と一緒に、いなくなってしまいました。
「あ、松平くん、先帰っちゃった?」
気がついたももが、追いかけると、また男子達が冷やかしにかかりました。
「マツケン、カノジョ、カノジョ!」
「違うわ!おまえら~~!なに!」
振り向いた松平くんが、とても怖い顔だったので、ももは、ちょっと言葉を失いました。
「えっと、えっと」
松平くんは、ももが、戸惑った表情をしているのに構わず言いました。
「用がなければ行くけど?」
「今日一緒に・・・ううん、なんでもないよ。ばいばい」
さっき、放課後一緒に話そうと言った事を、松平くんは聞いてなかったのかなとあきらめて、ももは、松平くん達を見送りました。
「ちょっとさ、あいつ、やっぱりムカつくわ、私」
後ろから見ていたゆうこちゃんが、怒って言いました。
「ももちゃんが、あいつのどこが好きなのかわからないわ」
ももは、すこし心に痛みを覚えました。
「好きって、その好きっていうのは、恋人とかっていう意味?」
「彼氏にするには、もっと優しい人を選ぶべきよ、絶対!」
ももとゆうこちゃんは、階段を降りて、昇降口に向かいました。
「松平くんが彼氏?それは、ありえないよ。お互いに、そんな意味で好きになるはずがないもん」
「どうして?」
「うんと、それは・・・」
どうしてそう言えるのか、ももは考えました。
「本当に好きな人なら、駆落ちをしてもいいって思えるものだと思うから」
ゆうこちゃんが、はっとした感じでももを見つめました。
「ももちゃん、それはもし、逆にマツケンとの恋が周りに認められなかったら、駆落ちをしてもいいということ?」
「ううん、そうじゃなくて」
ももは、小学生のときに高校生と駆落ち事件を起こしたひめ子さんの話に、ことさら憧れてしまっていたのでした。
「でもちょっとは好きなんでしょ?」
「う~ん」
ももは、だんだん、頭の中がごちゃごちゃとしてきました。
「あたし、わからない。ごめんね、ゆうこちゃん。マツケンのことは、好きと嫌いとその中間があったら、きっとその中間なんだと思う。はっきりしない気持ちっていうか。あたしとは、だいぶ性格も違うから、分かり合えないところも多いような気がして。でも、だから、話していて楽しいのかもしれない」
学校の門を出て、ひまわり屋の前で、2人はさらに話しました。
「ごめんね、私こそ、なに熱くなってるのかしら・・・?ももちゃんが、私の知らないところで、急に大人になっちゃった気がして、焦っちゃったんだわ、きっと。考えてみれば私達、来年は中学生だもんね。恋のひとつやふたつで、わぁわぁ言うのも、子供だわよね」
「恋かぁ。ゆうこちゃんは、好きな人いないの?」
「私、理想の人はいるの」
「だれ?」
「ナラ王様」
「えっ、王様?なに王様?」
「マハーバーラタっていうインドの物語に出てくる王様なの」
「読んだことないや」
「今度貸したげるね。王様、騙されちゃうんだけどね、すっごく素敵なの」
「むずかくない?」
「そんなことないない」
「そうだ、ゆうこちゃんに話そうと思ったことあったのに、また話が脱線しちゃったね。まだ、時間大丈夫?」
ゆうこちゃんは、ひまわり屋の柱時計を見ました。
「うん平気」
「土曜の午後ね、ゆうこちゃんと別れてから、あたし、忘れ物を取りに戻ったの。そしたら、公園で松平くんに偶然会ったんだ。浜口くんが怪我したことを聞いて、救急車が来るまであたしも待っていたの。浜口くんは、案外元気そうにしゃべっていたけど、足にひどい怪我をしていて・・・。えっと、川原の大きな石に足がはさまってしまったんだって。痛そうだったよ」
「痛た、想像しただけで痛いわ。かわいそうに!ドジしちゃったのね。早く治るといいわね。浜口がいないと、教室がしーんとなることが多いって、今日思っちゃった。いつ退院するのかな」
「松葉づえで歩けるようになったら、登校したいって言ってた。みんなで、浜口くんとこへ、お見舞いに行って元気付けたら喜ぶかも」
「そうね。でも大勢で押しかけて、迷惑にならないかしら」
「浜口くん、ゆうこちゃんにお見舞いに来て欲しいって言ってたよ」
「ちょっと待って!ゆうこちゃんにって・・・。なんでそんなこと言ったの、あの子!」
ゆうこちゃんが、突然大きな声を出したので、ももは、軽く飛び上がりました。
「わっ、びっくりした!なんでかってか、来て欲しいと思ったからだと思うよ?」
「もっと、正確な感じには?何て言ってたの?」
「えっと思い出すと、『倉沢に会えなくなる、お見舞い希望』だったかな?」
「私、行かないわ。お見舞いなんて」
ゆうこちゃんはそう言うと、黙ってしまいました。


2008-01-15 01:17  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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ももシリーズ 60 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


60
5限、6限の授業の間中、ゆうこちゃんは、授業に集中できませんでした。
(私、動揺しているわ。やきもちを焼いてる。ももちゃんに?マツケンに?2人に?わからないわ。なにかしら、この気持ち)
今日の放課後はピアノのお稽古があります。あんまりゆっくりと話している時間はありません。ゆうこちゃんは、ふーとため息をつきました。
(私は、今までたくさん習い事をしてきたわ。月曜はピアノ、火曜は英語、水曜は習字、木曜は合気道、金曜は学習塾。ママは、続けられないものがあればやめてもいいっていってくれてる。でも私は、続けられる限り、どれもがんばりたいって思ってる。そのために、友達と遊べないことが、多かったわ。習い事に行けば、お友達もいるけれど、どこかライバル意識のある友達だもの。私にとっては、ももちゃんだけが、本当に気をゆるせる大親友なの。なのに、ももちゃんは、マツケンなんかといつの間にか、仲良くしちゃって)
ゆうこちゃんは、再びため息をつきました。
そして、授業に集中するために、おでこをたたいて気合を入れました。


2008-01-14 02:08  nice!(0)  コメント(0) 
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お話の練習 59 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


59
教室へ戻ると、他の友達はおらず、ゆうこちゃんだけが、ももが来るのを待っていました。
「ゆうこちゃん、ごめんね、待たせちゃって」
「ううん、平気よ。次音楽室ね。あ、笛忘れないで持ってってね。急ぎましょ」
音楽室へ移動です。
「ももちゃん、マツケンとなにかあったの?みんながすっごくうわさしてるわよ」
「松平くんね、先生のアルバムを返すの遅くなったってことをあたしに言いたかったみたい。それから、ひめ子さんの写真のことも」
「2人で写真を見たの?」
「うん。松平くんがね、自分が先生の卒業アルバムを見たときに思ったことを教えてくれたの。それは、ひめ子さんの双子の片割れが、写真に写っているんじゃないかってことだったの。それでその女の子の名前が、黒川ゆり花っていって、顔はひめ子さんにそっくりなんだけど、イメージが全然違ったの」
「どんなイメージだった?」
「髪が短くて、元気っこな感じかな。松平くんは、そっちのこのほうが好きって言ってた」
「そんなことも言うの!あのマツケンが!へえ。初めて聞くわ。そうだったの」
ゆうこちゃんは、自分の長い髪をさらりと後へ流しました。
「ももちゃん正直、マツケンと話合う?」
「う~ん、合うかはわかんないな、さっきはすっごく楽しかったけど」
「ええっ、そうなの~?」
ゆうこちゃんは、さらに質問しました。
「それで?どっちから告白したの?マツケンでしょ?」
「告白って、そんなこと何にもないってば」
「隠してない?なにか。私、わかっちゃうんだから。女のカンは鋭いのっ」
「なんにもないもん」
「ももちゃんのこと、何でも話し合える親友だって信じてた。恋っていともたやすく、友情を壊してしまうものなのね。」
ゆうこちゃんが、目をうるうるさせました。じつは、半分は、話を聞きだすための演技なのですが・・・。
ももは、はっとしました。ゆうこちゃんに言っていない事は確かにありました。それは、土曜の午後、ゆうこちゃんと別れた後のことでした。
「そうだ!ゆうこちゃん、やっぱりある」
ゆうこちゃんは、けろっと泣き止んで、にっこり笑いました。
「ほらぁ!続きは放課後、たっぷり聞かせてもらうからねっ」


2008-01-11 01:40  nice!(1)  コメント(3)  トラックバック(0) 
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お話の練習 57~58 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


57
翌月曜日の朝、教室は静かでした。
朝の会が始まると、一昨日怪我で入院した浜口くんの話題になりました。
先生が、お祭りで羽目を外し過ぎないように、それから、川で遊ばないようにと、生徒達に注意をしました。
松平くんは、まっすぐ先生のほうを見て話を聞いていましたが、その表情には、いつもの冷静な表情の中に寂しさが見て取れました。
(松平くん、浜口くんの怪我のショックから立ち直っていないみたい)
あの時、ももは、後ろから見ていました。
担架で運ばれた浜口くんは、松平くんに言ったのでした。

「マツ、おまえのせいじゃないよ。気にすんな」
「ごめん。俺が近道しようなんて言わなければ」
「いいのいいの。俺にとって、おまえは親友なんだから。俺がいない間、クラスの仲間を頼むぜ」
「わかった」
「あぁでもついてねぇな。倉沢に会えなくなるよ~」
「なんか、気持ちがバレバレなんだけど」
「いいじゃん、お見舞い希望~」

浜口くんは、クラスの人気者でした。
お調子者でいつもニコニコしていて、男女問わず、誰とでもうちとけるタイプの男の子でした。
それに対して、松平くんは、秀才でちょっと口の悪い男の子でしたが、ここ一番という時には底力を発揮するタイプなので信頼を集めていました。
そんな異質な2人が揃うと、なぜかにぎやかな漫才のようなかけあいになるのでした。ももは、考えました。どちらがボケとつっこみかな?
それよりも、この会話を聞いて、浜口くんが、ゆうこちゃんのことを好きだということに、気がつかないももは、なんて鈍いのでしょうか。

58
給食の時間が終わり、給食当番が後片付けを終えた頃、松平くんがもものところへやってきました。
「ちょっと来てくれる」
「なあに」
2人は廊下に出ました。
松平くんは、先生のアルバムを入れた袋を持っていました。
「これから、これを先生に返しに行く。返すのが遅くなってしまったのは、理由があって」
すると、教室から、他の男子が冷やかしました。
「おまえら、何してるの?あぁ!マツケンが、赤城にプレゼント渡してる!」
松平くんは、その子をにらみました。
「あのねぇ、そんなんじゃないって!」
「顔が赤くなった。すげぇ!マジなんじゃない?やば~い!」
ももは、思わず、松平くんの手をとりました。
「違うんだって、これはね、先生から借りたものなんだから」
「手つないだ~」
松平くんは、ぱっとももの手を振りきりました。教室から興味津々の生徒達が、2人を見つめて冷やかしました。
「もう、違うの、みんな。松平くん、ちょっと向こう行って話そう」
「赤城がリードしてるぜ!ありえない光景!」
ももは、みんなを後目に、屋上へ上がる階段のところまで、松平くんを連れてきました。
「ここ、ゆうこちゃんとの秘密の場所なの。相談ごとがある時は、いつもここで話すの。みんなさ、なんであんなに騒ぐんだろうね」
「さあね」
松平くんは、そう言いながら、アルバムを取り出しました。
そして、話し始めました。
「まだ、アルバムを返してなかったのはさ、ある発見をしたからなんだ。例の白井ひめ子の写真が7組にあったよね?赤城、その先の9組の写真も見た?」
「見てないよ」
「やっぱりね!」
「なあに?どうして?」
松平くんは、アルバムを開いて、3年7組のページを指差しました。
「この白井ひめ子の顔をよく見て、覚えた?」
「覚えてるし頭に焼き付いてる。ねえねえ、松平くんは、ひめ子さんの写真見て、どう思ったの?」
「あのね、俺の話を聞いてくれない?」
「あたし、あまりの可愛さに、見とれちゃったの。こんな女の子が身近にいたら、テレビのアイドルなんてかすんじゃうなぁって思って」
「それは同感。でも俺は・・・」
それから、3年9組のページを開き、指差しました。
「この黒川ゆり花ってこのほうがいい」
ももは、見比べました。
「すっごく似てる」
「な?ずっとそれを、言おうと思って今やっと言えた。顔合わせても、話す機会なかったから。黒川ゆり花、本当に、そっくりじゃね?髪の毛や日焼けぐあいが、白井ひめ子とは違うから、最初、俺もわからなかった」
「ほんと、うりふたつ」
「ふつう、双子って同じような格好をすることが、多いと思うんだ。この2人は、顔は一緒でも、対照的だよな」
松平くんは、あごに手を当てて、考えながら言いました。
「苗字が違うから、いとこなんだろうな」
「そうだ、松平くん、聞いて!」
「ひめ子さんのおばあさんのこと?」
「なんでわかるの?そう、えっと、正確には、まま母なの。ひめ子さんは、養護施設の『幸せの家』に暮らしてたひとなの。娘になって、もらわれていった先が、おばあさんのところなの」
「ああ、なるほど、わかった」
まだ続きを言っていないのに、松平くんは、先手をうって話し始めました。
「つまり、もともと双子だったひめ子さんとゆり花が、『幸せの家』で暮らしていた。そしてひめ子さんだけが、おばあさんにもらわれて養女になり、苗字が変わった。それから、中学では、双子の姉妹であることを周囲に隠していた、ってことなのかな」
「今、ゆり花って呼び捨てだったね」
「・・・俺の話、聞いてた?」
「聞いてた聞いてた。でも、あたしなら、隠したりしないのにな、双子の姉妹だってこと」
「実際に当事者になってみなければ、わかんないんじゃない」
「松平くんちは、兄弟いるの?」
「俺は、一人っ子」
「あたしは、お兄ちゃんが一人。女の子の姉妹が、いたらいいのにな」
「そう?」
「双子に、憧れる」
「なんだそれ?わけわかんないな。自分とおなじ顔がもう一人いたら嫌なんじゃないの、普通は」
「そうかなぁ」
「おっと、今何時?アルバム、今度こそ先生に返しに行かなきゃ」
松平くんは、立ち上がりました。
「あたし、松平くんとこの話もっとしたいな。放課後、話そうよ。ゆうこちゃんも一緒に。ゆうこちゃんは、塾があるから、少ししかいられないけど」
「倉沢って、俺のこと割と責めるよね。あれ何なの?」
それは、土曜の帰りの教室でのことでした。ゆうこちゃんが、松平くんに、「弱い者いじめは最低よ」と言って、なじったのです。
「正義感が強いの、ゆうこちゃん。それと、思い込みが激しいのと、友達思い」
「俺が、赤城をいじめるわけないじゃん」
「嘘だぁ、いじわるしたもん」
ももは、そこのところは、譲りませんでした。
「はぁ、きみちょっとねぇ、もっとよく人や周りのことを見ていないと、今に大変なことになるぞ。俺みたいないい奴、ほかにいないっつーの」
松平くんは、階段の手すりをすべって下りました。
「松平くん!」
「ん?」
「ごめんね。ありがとね。とそれから、元気出してねっ」
「なんだそれは」
ちょっと困ったように笑って、松平くんは階下へ下りていきました。


2008-01-06 14:41  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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ももシリーズ 56 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


56
「おにいちゃん、気がついてたの」
「俺ぁ、猫がにゃあと言っただけで、起きちゃうからね。誰かが、そっと階段を上がったり下りたりすれば、わかるのさ」
得意気に言うおにいちゃんは、気配を消す達人で、みんなで居間でテレビを観ているとき、いつの間にかいなくなっても、誰も気がつかないのです。
「昨日、公園にかばんを忘れてきたのを、取りにいってきただけだよ。心配かけちゃってごめんね、おにいちゃん。あたしも、おにいちゃんみたく忍者みたいに気配消せたらよかったのにな。おんなじ血が流れているから、いつかは消せるよね?」
「修行が足りないな、ま~だまだだ。忍者の修行は、まずは朝飯から始まる。ほれ、飯、食べに行くぞっ」
 おにいちゃんと一緒に、1階へ降りるとお父さんは、新聞を読み、お母さんは、おみそ汁をよそっていました。
「ももちゃん、はい、それそこへ持っていって。ももちゃんのだから」
「うん」
「じゃあ、いただきます」
お父さんは、新聞をたたむと、ももに言いました。
「もも、今日はみんなで一緒に、お祭りに行って帰りにラーメンを食べようかって話しているんだ。どうだ?」
「いいねぇ。ラーメン食べたい」
お父さんは、今朝、ももが無断外出したことを、知っているはずなのに、あえてそのことを、食卓で話す事はしませんでした。
 ももにはお父さんが、口には出さなくても、自分のことを心配してくれていることが、なんとなくわかりました。いきなり問い詰めたりしないで、遠まわしにおにいちゃんに聞くという思慮深さが、お父さんらしい行動様式なのです。
 そうなってくると逆に、でかけたのにでかけなかったふりをすることに、罪悪感を覚えてしまうももなのでした。
 ももは、朝ごはんの後、お父さんに、今朝の外出のことを、そっと伝えました。
すると、お父さんは言いました。
「今度から、そういうことはしちゃだめだ。ちゃんと本当のことを言えない程、お父さんとお母さんのことが、信用できないかい?」
ももは、お父さんとお母さんに、忘れ物ばかりする自分をがっかりされたくなかったことを話しました。お父さんは、なあんだといった感じで、
「まあ、ちょっとくらい忘れ物が多いからって、それほど気に病むことじゃないぞ。お父さんなんて、一昨日、パジャマのズボンの上に背広のズボンをはいて、会社へ行っちゃってなあ、はっはっは!おっちょこちょいだろう?まあ、おっちょこちょいでも、忘れ物の王者でも、自分ひとりで困った参った!と思うだけならまだいいんだぞ。問題は、人に迷惑をかけなかったかどうかだ。人様に迷惑をかけるようなことは、しないようにするのが、大事だぞ。まあそれにしてもなあ、ひとつのことに集中すると他のことが見えなくなるところは、ももは、お父さんとよく似てるなあ。まあ、お母さんが心配するのは、極端なところもあるけれども、家族を思うあまりのことなんだなあ。それもまた、心配されたほうはたまらないが、素晴らしいことなんだなあ」
 隠し事をすることは、信頼を裏切ることになりかねません。小さな誤魔化しや嘘をつかなくてはならない理由がももにあったことを、お父さんは重視してくれたのでした。
 もものお父さんは、怒ると怖いけれど、むやみやたらと怒る人ではないのです。ですが一たび道理に合わないことをした場合には、徹底的に断固として、叱る人なのです。


2007-12-30 19:38  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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ももシリーズ 55 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


55
ももが、無事に自室の部屋へたどり着いた時、時刻は午前6時30分でした。
せっかくの日曜日なので、ももはパジャマに着替えて、もう一眠りすることにしました。
朝からひとりで、公園まで出かけてきたことが、今になってひどく怖いことだったように思えてなりません。
できることなら、なかったことにして眠ってしまいたい。
居間では、おにいちゃんとお父さんが、話をしていました。
もものおにいちゃんは、光という名前です。高校2年生です。
「お早う、光。早いな」
「おはよっす」
「朝、玄関の鍵が開いていたんだが、ももは、部屋にいるか?」
おにいちゃんは、この時、ほんのちょっとの時間、惑いました。
「ああ、いるよ。もう起きてた」
「そうか」
「昨日、鍵かけわすれて寝たんじゃない?」
「そうなら物騒だな、気をつけないとな」
「俺も寝る前に、よく確認しとく」
じつは、お父さんは、朝、ももが出かけてすぐに、新聞を取るために起きており、その時に玄関の鍵がかかっていなかったので、おかしいと思ったのでした。
居間の時計が、午前8時をさしました。すでに、朝ごはんの用意はできています。
ももだけが、まだ起きてきません。お母さんは、やきもきした声でおにいちゃんに頼みました。
「光、ももを起こしてきてくれる?」
「へい」
おにいちゃんは、ももの部屋のドアをノックしました。中から、寝言のような声が聞こえます。
「・・・うう」
「おーい、もも。朝だぞ」
「起きてるよぉ」
「朝飯が逃げるぞ~。降りて来い」
「眠い・・・」
朝の苦手なももは、なかなか目が覚めません。おにいちゃんが言いました。
「もも、お父さんが心配してたぞ。さっき、ひとりでどこかへ出かけてたんだろう?何か、悪い仲間に脅されたりしてるのか?怒んないから、にいちゃんに言ってみろ。お父さんに、隠し事や嘘は、禁物だぞ」
ももは、がばっと布団をめくって飛び起きました。
お父さんが、本気で怒った時の怖さを、思い出したのです。それは、お母さんのヒステリーとはまた別の、雷を落とされてびくっとくるような怖さなのです。


2007-12-24 01:35  nice!(0)  コメント(0) 
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お話の練習 54 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


54
ももは家に着きました。
自転車をガレージへ入れ、玄関のドアをそっと開けると、中から洗濯機を回す音が聞こえました。
廊下には誰もいませんでした。
そっと中から鍵をかけ、抜き足差し足で廊下を歩き、階段を四つんばいでのぼります。
順調順調。そう思ったとき、上から誰かが降りてきました。
おにいちゃんです。
おにいちゃんは、階段で伏せの姿勢をしているももをみてこんなことを言いました。
「ん?なんだ?朝から」
「おはよ、おにいちゃん」
「・・・避難訓練か?」
「ううん。あっ、こんなところにほこりがある」
「なに、俺がほこりを撒き散らしてるのか」
「おにいちゃんのごみぃ」
ももは、本当に掃除をしているかのように、ほこりを取って見せました。すると、
「ひえ~逃げろ~」
おにいちゃんは、ドタドタと階段を降りていきました。
こんな時、あまり深く追求をしないようにしてくれるのが、おにいちゃんなのです。
でも、持ち前の勘で、なにかしらは思っただろうなと、ももは思いました。


2007-12-23 01:26  nice!(0)  コメント(0) 
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お話の練習 53 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


53
公園の近くに、長いトラックが停まっていました。車の窓ガラスが曇っています。ももが、自転車を立ち乗りしながら通りすぎようとしたとき、急にトラックの運転席のドアが開きました。慌ててよけたので、無事に公園へ着きました。
(びっくりした!危なく車のドアにぶつかるところだった)
ももは、自転車を川へ降りる階段のそばまで乗っていき、かばんが落ちていないか探しました。階段の下まで行きましたが、昨日ゆうこちゃんと座った川の近くにはありませんでした。
(おかしいな~。なくしたとすれば、この辺なのに。たこ焼き屋さんへ向かった道をたどってみよう)
屋台村は、昨日の賑わいとはうって変わって、シーンとしていました。カラスとすずめだけが、忙しく道端に落ちている食べ物を探しているところでした。
「ねえ、きみたち、あたしのかばん、知らない?」
ももは、鳥たちに話しかけました。鳥たちは、知らぬふりで、ちょこちょこと何かをついばんでいます。
「そうかぁ、わかんないよね。朝ごはん、おいしい?」
 そのうちに後ろから、ざくっ、ざくっという足音がしたので、はっとして振り返ると、金髪で色の白い女の人が歩いてくるのが見えました。女の人は、どんどん近づいてきました。ももは、心臓がどきどきしました。逃げようか、それとも・・・?
「あんた、誰と話していたの?」
女の人は、眉毛のない白い顔で、ももをにらみました。
「あの、あの・・・」
鳥さんと話していたの・・・と言おうか言うまいか迷っていると、
「あんた、霊が見えるの?もし見えるのなら、教えて」
女の人は、ももが、幽霊と話をしているのだと思ったようでした。
「み、見えません」
首をぶるぶると横にふって答えると、女の人は、ちょっと肩をすくめました。
「幽霊とお話できないの~?超笑えるんだけど。ざ~んねん」
「おねえさん、お祭りの屋台の人ですか?」
「天下一品クレープ屋のおねえ系美人!といえばあたしのことヨ。てか、まだ朝飯前のメイク前。店はここね。8時過ぎたらまたおいで!クレープの大盛りつくってあげる!」
クレープ屋のおねえさんは、ももに店の場所を教えてくれました。ももは、おねえさんに、かばんのことを聞こうと思い立ち、昨日のことを話しました。
「マジ?昨日の救急車、あんたの友達だったの~可愛そうに。なくしものなら、総合事務所のテントに届いているんじゃない?一緒に行ってあげる」
おねえさんは、ももを案内してくれました。すると、テントの忘れ物置き場のところに、もものかばんが置いてありました。
「これです、あたしのかばん!」
おねえさんは、言いました。
「中身は大丈夫?お金は入ってる?ちゃんと確認したほうがいいって」
ももは、慌ててお財布の中を調べました。お金はちゃんとありました。
「入ってました・・・あのこれ、ちょっとだけど、お礼です」
ももは、100円を出して、おねえさんにあげようとしました。
「い~よ!いらない!いらない!いらない!ホント朝から笑かしてくれるよ、この子は」
おねえさんは、大爆笑していました。
「だって・・・。おねえさん、ありがとう」
「だんだん明るくなってきた。あんたここで一緒に働いてみる?」
「あたし、うちへ帰らないと。その、内緒で出てきちゃったから」
「そうなの~。ん~じゃ、早く帰りな」
ももが頭を下げると、おねえさんは、花が咲いたようににこっと笑い、お別れする時、ももに長いこと手を振ってくれました。
みかけはかっこよくて怖いけれど、とても優しいおねえさんでした。
朝日が顔を出しはじめまています。急いで帰らないと、お父さんとお母さんが、起きてしまいます。ももは急いで、自転車にまたがり、元来た道を引き返しました。


2007-12-20 16:23  nice!(0)  コメント(0) 
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